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“新生”巨人軍の逆襲が始まった!
原監督の非情なる「実力至上主義」。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/08/22 12:15

“新生”巨人軍の逆襲が始まった!原監督の非情なる「実力至上主義」。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

8月20日のヤクルト戦で、監督として通算600勝を挙げた原辰徳監督。首位と13ゲーム差からの逆転優勝を遂げた「メークレジェンド」(2008年)の再現はあるのか?

「チームの和を形成するため」の実力至上主義。

 非情なる決断はゲーム中でも同じこと。

 7月31日のヤクルト戦では、淡白な打撃内容が続いていた坂本勇人を「レギュラーとしてふさわしくない」と5回の守備からベンチに下げた。8月7日の広島戦でも、失策、走塁ミスをしたプレーに対し、「プロとして恥ずかしい」と一喝。6回途中で交代を命じている。

 スタメンをある程度固定したほうが戦いやすいことは事実だ。しかし、そこに固執してしまっては窮状に直面したときに殻を破るのは困難になる。

「本来、我々が身を投じているチームスポーツの世界は厳しいのです。真のチームの和を形成するために監督としてしなければならないことは『実力至上主義』。ですから私は、時には厳しい決断をしなくてはなりません。プロというのは、弱き者に手を差し伸べ救済するほど甘い世界ではありませんからね」

 原監督は以前、そのように持論を述べてくれた。指揮者というのは、時に厳しくタクトを振るい演者を鼓舞し、一個体として壮大なパフォーマンス、すなわち勝利を生み出す必要があるのだ。

 その過程では、一小節たりとも妥協は許されない。勝利への渇望、執着心の灯を絶やしてはならないのだ。

7回まで無失点に抑えていた澤村を無死一塁の場面であっさりと交代。

 最近では、8月19日のヤクルトとの首位攻防第1ラウンドで、それをはっきりと表現した。

 2対0で迎えた8回の守備から、セカンドに藤村大介、レフトに谷佳知を入れるなど、守り勝つための布陣を整えた。そこまでは理解できる。決断に迷いがないと痛感したのは、7回まで無失点に抑えていた澤村拓一を無死一塁の場面であっさりと代えたことだ。

「(打席を迎える青木宣親は)タイミングが合っているように感じましたから。ランナーがいなければそのまま行かせるという選択肢もありましたが、あの場面では山口(鉄也)で、と」

【次ページ】 逆転優勝に向け、最後まで諦めない勝利への執着心。

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