球道雑記BACK NUMBER
眠れる獅子はいつ目覚めるのか?
埼玉西武ライオンズの暑く厳しい夏。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/08/18 10:30
8月15日時点でリーグワーストの9敗を喫している涌井秀章。昨季の成績14勝8敗より大幅に悪くなっている今季これまでの数字に、エースの称号が揺らぐ……
あと一本が出ずに引き分けた8月5日の福岡ソフトバンク戦、中島裕之の足が西武ドームの長い階段の途中でピタリと止まった。
ほんの一瞬だけ漏れたため息。
2秒、3秒、もしかすると10秒はその場に立ち止まっていただろうか。休む間もなく戦い続けた代償がここに来て表れてきている。咄嗟にそう思った。
「でも、一気に行かなきゃね」
そう呟いて一瞬だけ笑顔を見せると50段近く残っていた階段を一気に駈け抜けた。
まだ終わらない、まだ終われない。
自分に鞭を打って遠ざかる彼の背中にはそう書いてあるようにも思えた。
底抜けに明るいキャプテン中島に悲壮感は似合わない。
後日、中島にこの日の階段の出来事を聞いてみた。すると意外な答えが返ってくる。
「あれね、いつもなんですよ。連戦の疲れとか試合で負けているとかそういうことは関係なしに疲れるものは疲れる、しんどいものはしんどい。ただそれだけですよ」
これには肩透かしを食らった。
前半戦最後に喫した9連敗、オールスター戦から休みなく続いた7連戦、さらに競り合いをものに出来なかった精神的疲労が前述の光景を生み出したと勝手に推測していたからだ。
7月25日の後半戦スタートを機に中島の左胸には「C」の刺繍が施されている。
「特にキャプテンになったからといって、何かを変えることもないし、やることはいつも一緒。ホント自然体でやっています」
底抜けに明るい中島のキャラに悲壮感は似合わない。むしろこうした状況に悲壮感を押し付けたり、何か変化を求めたがるのは我々見ている側の勝手だったりするのかもしれない。
また、そうした風潮が彼ら選手たちを窮地に追い込んでいく、そんな質問をした自分が少しだけ恥ずかしく思えた。