野球善哉BACK NUMBER
「相変わらず多い、見逃し三振」
智弁学園と習志野が敗北した要因。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/08/18 18:55
智弁学園は良い流れになった途端に「見逃し三振」が出てしまった。空振り三振も見逃し三振も同じだとする論もあるが……
「相変わらず多い、見逃し三振」
日本高校野球連盟・脇村春夫前会長の嘆きの声が聞こえてきそうである。
春・夏の甲子園の閉会式に何度か足を運んだことがあるものならば、一度は聞いたことがあるはずだ。脇村前会長は大会講評のたびに、そう言っていたものである。
今大会では、審判のストライクゾーンが不安定だからなのではないのかと思ったこともあったが、準々決勝2日目は間違いなく「見逃し三振」が明暗を分けた日となった。「見逃し三振」が、どれほど恐ろしいものかということを、思い知らされた2試合であった。
爆発しかけた打線を一気に静めてしまった「見逃し三振」。
第1試合、作新学院vs.智弁学園。
甲子園に来て、初めてマウンドに立った智弁学園の背番号「10」小野耀平は快調に滑り出していた。最速141キロのストレートと打者の手元で鋭く滑るスライダーで、初回を2奪三振。今大会2試合で完投したチームのエース・青山大紀と自らを比較して「投手として負けている気はしない」と公言する通りの、素晴らしいピッチングだった。
抜擢された控え投手のこの上ない出だしはチームにリズムを生む。
その裏、智弁学園は持ち前の攻撃力を見せつけた。先頭の大西佑季が右前安打で出塁、犠打と内野ゴロで2死三塁とすると、4番・中道勝士がピッチャー強襲の内野安打を放ち、1点を先制した。さらに、小野山敦が死球で歩くと、6番・横浜直樹の打球は左翼手の頭上を越える2点適時打。
3回戦の横浜戦で1イニング8得点を記録していただけに、智弁学園打線の怖さを見せつけるような先制パンチだった。
ところが、である。
そのあと、打席に立った7番、ピッチャーの小野が3ボール2ストライクからの6球目を見逃したのである。
判定はストライク。
見逃し三振だった。
「見逃し三振」が投球の乱れにも繋がってしまった時……。
「(チェンジとなって守備につく時に)見逃し三振で攻撃が終わったのはちょっと嫌だなという予感はありました。小野にも、声を掛けたんですけど……」と捕手の中道は試合後に語っている。
2回表、初回が嘘だったかのように小野のピッチングは荒れた。
先頭打者の飯野徹也に左前安打を打たれると、続く5番・内藤諒太には死球を与える。さらに、二塁にけん制すると、それが悪送球になり、二、三塁。6番・山下勇斗の中前打で1点を失った。1死の後、8番・大谷樹弘には犠飛を打たれた。
3-0から3-2。智弁学園の先制パンチは、水泡に帰した。
3回表も、小野の投球は安定しなかった。連打で好機を作られて3失点。この回を終えて、小野は右翼を守っていたエースの青山と交代した。