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眠れる強豪校・関西がついに覚醒!
如水館を破った神懸かり的采配。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/08/17 18:50
地方大会の決勝でも、土壇場の9回で3点差を追いつき同点とした後、延長戦でサヨナラ勝ちするなど、今夏の関西は実力だけでなく運までも味方につけている。自身の高校時代にベスト8まで進んだこともある江浦滋泰監督も、この快進撃に感慨しきり
顔の角度が少しずつ上がり、表情も明るくなってきた。
関西(岡山)の監督、江浦滋泰(しげる)がお立ち台で話をするときのことである。
2回戦から登場した関西は、初戦、優勝候補の九州国際大付(福岡)を延長の末、3-2で破った。それでも江浦は、ややうつむきながら、消え入りそうな声でこう語っていたものだ。
「甲子園というと、あんまりいい思い出がなかったんですけどね……。再試合で負けたり、立て続けに優勝チームと当たったり」
'02年に監督に就任した江浦は、これまで春夏通じて計7度、甲子園に出場している。だが、成績は芳しくない。
'07年春にベスト8入りした以外は、すべて初戦か2回戦で敗退している。
しかも確かに、どこか不運めいているのだ。
'10年の興南、'11年の東海大相模と2年続いて優勝校と初戦対決。
江浦が言う「再試合」とは、'06年春のことだ。2回戦で斎藤佑樹を擁する早実とぶつかり、延長15回を戦って7-7の引き分けに終わった。翌日、再試合を行い、3-4で敗れている。
また、'10年春は興南、'11年春は東海大相模と、いずれもその大会で優勝するチームと初戦でぶつかり散っている。
江浦が「いい思い出がない」と、うつむくのもうなずける。
だが、そういう意味では、今年はいい流れだ。
3回戦も九州の強豪である明豊(大分)と対戦し、今度は12安打を許し4回もの満塁のピンチがあったにもかかわらず、わずか1失点に抑えた。これだけ打たれながら最少失点に抑えたというのは神懸かり的とさえいえる。
試合後、江浦はこう言って笑った。
「甲子園っていうと、満塁になると必ず点が入るイメージがあったんですけどね。やっぱり厄払いにいったのがよかったんですかね」