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柔道世界選手権で世代交代なるか?
“崖っぷち”鈴木桂治が燃やす執念。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/08/17 10:30
全日本選手権決勝で穴井隆将(右)を破り、世界選手権男子100kg超級代表で最多5度目の出場を決めた鈴木桂治。最年長の31歳、3度目の五輪出場を目指す
北京五輪以降、鈴木は世代交代の波にさらされてきた。
その一人、100kg超級で出場する鈴木は、アテネ五輪で金メダルを獲得するなど、第一人者として活躍してきた。
だが、連覇を目指した北京五輪の初戦で敗北を喫してから、苦しい日々を過ごしてきた。故障にも苦しめられ、国内の大会で敗れることもあった。
復活を期した昨年の世界選手権でも、好成績に沸く日本勢にあって100kg超級の初戦で敗れ、「夢であってほしい」とつぶやく姿があった。その同じ階級では成長著しい高橋和彦が4位に。
鈴木は無差別級にも出場したが、上川大樹に準決勝で一本を取られ、周辺からは、「世代交代か」という言葉も聞かれた。
「崖っぷち」から這い上がり、4年ぶりに全日本を制覇。
年が明け、鈴木は自身の状況を、「崖っぷち」と表すようになっていた。連日のように必死に練習で汗を流し続けた。
そこまでしても……状況は好転しなかった。
今年4月上旬の全日本選抜体重別選手権の決勝で、上川に再び一本負けを喫したのである。世界選手権代表も遠ざかり、もはや追い込まれるところまで追い込まれていた。
4月29日、鈴木は全日本選手権を迎えていた。
鈴木はこの大会で、近年にはなかった辛抱強い戦いぶりを見せてつけて、一戦ずつ勝ちあがっていった。100kg級のエース、穴井隆将との対決となった決勝でも、相手の技をこらえきると、返して一本。
全日本選手権では実に4年ぶりの優勝だった。それは、世界選手権代表入りを決める勝利でもあった。
大会後、鈴木は言った。
「あきらめきれなかった」
そのひとことに、すべてが表れているのかもしれない。