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メジャーから語る「ユニフォーム論」 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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posted2006/02/03 00:00

メジャーから語る「ユニフォーム論」<Number Web> photograph by gettyimage/AFLO

 まだ最近のことだが、LA地域の日系スーパーマーケットや日本食レストランで無料配布している日刊の日本語タブロイド紙の1面記事が目にとまった。その新聞は日本の某スポーツ紙と提携しており、その記事のほとんどがそこから流用したものだ。そこには元ジャイアンツ監督、長嶋さんの現役時代の写真とともに、以下の見出しが躍っていた。

 ──背番号「3」長嶋さん、復活!アディダス社がユニフォーム制作──

 皆さんも記憶しておられる方がいるだろう。実はこの見出しを見た瞬間、(そうか、日本もついに始まったのか)と嬉しくなったと思いきや、実際に手に取って記事を読んだところ(なんだ、そういうことか)と、今度は逆にやや失望感を味わうという経験をさせられてしまった。

 その記事の内容は、今度ジャイアンツがオフィシャル・パートナー契約を結ぶアディダス社と協力し、今季から使用する公式ユニフォームに、ファンの希望する背番号と名前を入れて販売開始するというものだった。自分自身もそうだが、メジャーに精通する皆さんにとっては、まったく目新しいことではないはずだ。メジャー全チームの公式サイトで、ユニフォームをカスタムオーダーできるサービスは、もうずいぶん前から一般的に行われていること。逆に日本でこういった話題が一面で報じられることに、ちょっと驚かされるぐらいだ。こんなことは今すぐにでも全チームが始めなければいけない“ファンサービス”だろう。

 実は、この記事の見出しだけを見て最初に嬉しく思ったのは、日本でもメジャーのように復刻版ユニフォームを販売するようになったのかと早合点してしまったためだ。

 米国で生活をして感じるのだが、この国の文化はアンティーク的なものを非常に大事にする。それはメジャーも同様だ。昔からベースボールカード収集が盛んなのもその1つだし、実はユニフォームにも大いにその思想が取り入れられている。

 時代を経るに従い、各チームのユニフォームが変遷を遂げている。ここ米国ではその変遷の歴史を愛おしむように定期的に復刻版のユニフォームを制作・販売してくれるのだ。かく言う筆者もかつて存在したニグロリーグのファンになり、同リーグ数チームの復刻版ユニフォームにすっかり心を奪われているし、最近ではそれがメジャーにも波及し、ニューヨーク時代のジャイアンツやブルックリン時代のドジャースのユニフォームなどもクローゼットに並んでいる。

 日本でもこのような復刻版ユニフォームを販売したら、話題にはならないだろうか。もし仮にジャイアンツが沢村栄治さんや川上哲治さんの現役時代や、長嶋さんや王さんが活躍したV9時代のユニフォームを販売したら、それらを欲しいと考えるファンは決して少なくないと思うのだが…。

 前述通り筆者がニグロリーグに興味を持ち始めたのは、メジャーのアンティーク的なプロモーションがきっかけだった。現在でもメジャーの数チームが毎年のように“ニグロリーグ・デー”なるプロモーションを行っているのだが、当時の選手たちを始球式に招待したり、選手たちが当時のユニフォームを着て試合を行う。その際は相手チームも必ず本拠地都市に存在した二グロ・リーグのユニフォームを着用する。そんなプロモーションに出くわすたびに、それらのユニフォームが好きになり、さらにはニグロリーグそのものの歴史を知りたくなっていった。

 日本でも昨年から交流戦が始まったが、これに合わせて“旧日本シリーズ対決”と称して、メジャー同様復刻版ユニフォームを使ってみるのも面白い。例えば、ジャイアンツ対ライオンズの時なら、1956〜58年に巨人、西鉄として対戦した当時のユニフォームを着用するのだ。交流戦をさらに盛り上げる効果が十分にあるだろう。それと同時に、多くのファンがプロ野球史に興味を持つようになり、さらにプロ野球に対する興味を広げてくれるかもしれない。特にプロ野球の黄金時代を知らない若いファンを取り込むには格好の機会になるはずだ。そして選手たちが着用したのと同じ復刻版ユニフォームを販売すれば、ファンの購買意欲も増進するだろう。このようなプロモーションを機構側が一括して行い、復刻版ユニフォームを制作する会社とライセンス契約を結んだとすれば、ライセンス料と売り上げの一部を各チームに還元できるというメリットも生まれてくる。

 改革と称して選手たちにサインを強要することだけがファンサービスではない。こんなユニフォーム1つだけでも、ファンが喜ぶプロモーションやファンサービスを行えるのだ。日本に浸透していないメジャーの良いところは、まだまだ沢山あるのだ。

筆者注・このコラムがアップされた早々に、読者の方からすでにタイガースが復刻版ユニフォームを販売しているとのご指摘を受けた。勉強不足をお詫びするとともに、貴重な情報を寄せて頂き、心から感謝します。

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