MLB Column from USABACK NUMBER
メッツが「放出」した美人妻
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byGettyimages/AFLO
posted2006/02/02 00:00
1月21日、メッツが、クリス・ベンソン投手(昨季10勝8敗、防御率4.13)を、元クローザーのホルヘ・フリオ等との引き替えで、オリオールズに放出した。トレードの理由について、メッツは、表向き「救援陣の補強のため」と説明しているが、本当の理由は、「お騒がせ女」として知られるベンソン夫人、アナさん(29歳)を、厄介払いしたかったからだというのが、巷の定説となっている。
アナ夫人は、その美しさだけでなく、物議をかもす言動でも知られている。夫がパイレーツにいた時代、「パイレーツのPCNパークではもうしたけれども、大リーグ30の球場の、すべての駐車場でカーセックスをするのが夫婦の目標」(註1)と発言して純情な野球ファンの顔を赤くさせたかと思えば、メッツにトレードされた直後には、「もし、夫が浮気をしているのを見つけたら、仕返しに、バットボーイも含めて、メッツの全員と寝てやる」(註2)とラジオ番組で発言してチームメートをドキッとさせる等、その問題発言を数え上げたら、それこそ、きりがない。
今オフ、ベンソン放出の噂はずっと囁かれ続けていたが、12月初めには、アナ夫人自身が、「メッツが放出したがっているのは夫ではなくて私」と、新聞記者に語るほどになっていた。アナ夫人は、「『プレーボーイ』誌とヌードになる交渉をしている私を、厄介払いしたがっている」と、メッツがトレードしたがる理由を具体的に説明したが、元ストリッパーという前歴がある(註3)だけに、人前で裸身をさらすことについては「免疫」ができていたのである。
マイナーリーグ時代のベンソンと結婚したときは23歳、現在3人の子を持つ母親であるが、いまだに、「『プレーボーイ』誌がヌード交渉に来るのももっとも」と、うなずかざるをえないほど、見事に均整の取れた肢体を保っている(お疑いの向きは、アナ夫人のホームページ、http: //www.annabenson.net/ でご確認されたい)。
しかし、メッツにとって、『プレーボーイ』でヌードになることも気に入らなかったろうが、それよりも気に入らなかったのは、アナ夫人が、今オフ、トレードでメッツに加わったカルロス・デルガドを、政治的理由で批判したことだった。デルガドは、イラク戦争に対する抗議の意を表明するために、ずっと、試合中に愛国歌「ガッド・ブレス・アメリカ」が演奏される際、ベンチにすわったままダウアウト前に整列することを拒否してきたが、アナ夫人は、これを「非愛国的、非アメリカ的」行為と非難したのである(註4)。メジャーでは、チームメートをマスコミ相手に批判することさえご法度というのに、よりによって配偶者が他の選手を批判したのだから、メッツのフロントとしても、アナ夫人放出を断行せざるをえない立場に追い込まれてしまったのだった。
ちなみに、アナ夫人によると、デルガドの「非アメリカ的」な行為とは正反対に、『プレーボーイ』で裸になるのは、あのマリリン・モンローもした、もっとも「アメリカ的かつ愛国的」な行為なのだそうである。「配偶者の『愛国的』行為を理由に夫を放出するとはけしからん」と、メッツを非難したのだが、こじつけとはいえ、「ヌードになること」=「愛国的行為」という論理を考え出すのだから、アナ夫人、ただ者ではない。
オリオールズへのトレードが決まった直後、ベンソン夫妻は二人で記者会見に応じたが、「全球場の駐車場制覇」という夫婦の「一大目標」について尋ねられた際、アナ夫人は、「オリオールズのホーム球場、カムデン・ヤードの駐車場についても、きちんと、洗礼を施す」と、元気一杯に答えた。この二人が今後どれだけ派手な「活躍」をするかを考えると、うかうかと目を離している暇はないようである。
(註1)アナ夫人の説明によると、家には小さい子供が3人もいるので、夫婦が二人きりになる機会は、たとえその場所が駐車場であっても、「無駄」にはできないのだそうである。
(註2)遠征に出かける度に浮気をする不届き者のチームメートの話を夫から聞き、「あなたが浮気したら許さないから」と、こういう話になったという。
(註3)17歳のときに妊娠して結婚するも1年半で離婚、シングル・マザーとして生計を立てるために、やむなくストリッパーになったという。アナ夫人を、ただの「軽薄女」と見る向きは多いが、見かけによらず、タフな人生を歩んできたことは確かである。
(註4)ベンソン夫妻は、2001年の9/11の連続テロ事件後、テロを防止するための非営利法人を設立、消防士を支援するなどの活動を続けてきた。1月29日、ニューヨーク・ベースボール・ライター協会でコミュニティ活動賞を授与されたことでもわかるように、「反テロ」については真剣な活動をしてきた「保守派」だけに、デルガドの「非アメリカ的」行動は、マジに我慢がならなかったようである。