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【キリンカップ2009 日本×ベルギー】
ウズベキスタン戦が見えた!
中村憲剛のジェラード化。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2009/06/02 06:01
ウズベキスタン戦のフォーメーションが見えてきた。
田中達也がケガで招集されなかったとはいえ、キリンカップでは2試合ともに従来の4-2-3-1システムを採用。田中達のポジションには本田圭佑、興梠慎三、香川真司ら複数の候補が挙がるなか、岡田武史監督はチリ戦に続き、ベルギー戦でも中村憲剛をトップ下で起用した。
特に、ベルギー戦は本番を想定するようなベストメンバーというべき布陣。右股関節痛を抱える中村俊輔を強行先発させたのも“W中村”の連係をチームに確認させたかったためではないだろうか。タシケントで合流する松井大輔の存在はあるにせよ、ぶっつけ本番の松井より、キリンカップで連係度を高めた中村憲が指揮官のファーストチョイスであることは間違いない。
“憲剛ルート”で広がった攻撃の幅。
中村憲が入った効果とは。
まず、決定的なパスを複数方面から出せるようになったこと。これまではボランチの遠藤保仁が主にバランスを取った働きに重点を置く分、長短の決定的なパスの出どころは中村俊に頼るところが大きかった。
それが、“憲剛ルート”の開通によって攻撃の幅が広がり、相手の的も絞りにくくなった。前半21分、長友佑都の先制点は、左サイドでボールを受け取った中村憲がパスを送ってアシストしたものだし、前半13分には中村俊に近づいてボールを受け取り、マイナスにパスを出して遠藤のミドルシュートを引き出したりもしている。
中1日で日本戦に臨んだ、動きの悪いベルギーが相手だということを差し引いても、中盤でよくボールが回った。前半だけでシュートは16本。ポジションチェンジを繰り返し、めまぐるしく中盤が入れ替わりながらのパスワークは、相手を十分に撹乱したと言える。
もう1つの効果は、攻撃にタメができるようになったこと。中村憲がキープすることで大久保嘉人や長谷部誠が何度も飛び出せる“間”をつくり出し、分厚い攻撃を演出することができたのだ。
岡田監督の「ジェラードをイメージ」との意図を具現化する。
チリ戦の前、指揮官には「(リバプールの)ジェラードをイメージしてほしい」と要求されたという。
パスの出し手にはとどまらず、豊富な運動量をもってして、受け手にもなってゴールをこじ開けろ、という意図なのだろう。
その要求に応えるようにベルギー戦の中村憲は、チャンスとみるや、迷うことなくシュートを狙った。前半23分、冷静に相手をかわして右足でゴールを決めるなど、ミドルレンジからのシュートを中心にこの試合でチーム最多となる6本のシュートを放っている。引いて守る可能性のあるウズベキスタンに、このミドルは有効手段となるだろう。