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【キリンカップ2009 日本×ベルギー】
快勝の余韻を打ち消した
格下相手への“慢心”。 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2009/06/02 15:00

【キリンカップ2009 日本×ベルギー】 快勝の余韻を打ち消した格下相手への“慢心”。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 一時はケガ人や体調不良者が続出し、直後に控えるワールドカップ最終予選ウズベキスタン戦への調整試合としての役割も危ぶまれてもいたキリンカップの2試合だったが、日本は5月31日の第2戦でベルギーに4-0で勝利を収め、2戦2勝として大会を優勝で締めくくった。それも、MF中村憲剛を中心にしたシステムを新たな攻撃のオプションとして手にして、だ。

「得点に絡むという憲剛のよさを生かした、彼のために用意したシフト」と岡田武史日本代表監督が公言してはばからない新しい形は、4-2-3-1の陣形でトップ下に彼を置くもの。「2トップを組もうにも、メンバーがいない」(岡田監督)という台所事情はあったものの、代表チームでの新たなポジションを得て、中村憲剛はスペースを見つけては相手最終ラインの裏へパスを繰り出す一方、自分でもシュートを狙い、日本の攻撃を活性化させた。

選手全員に浸透していた新システムに取り組む意識。

 ケガ人や体調不良者が戻ったため、同じく4-0で快勝した5月27日のチリ戦とは先発メンバーの顔ぶれは変わったが、異なる組み合わせでもシステムは十分効果的に機能した。空いたスペースに入ってくる3人目の選手の動きも、個々の選手と周囲との絡みもスムーズで、前半の2得点はそこから生まれた。

 前半21分の1点目は、左サイドを上がってきたDF長友佑都に、中村憲剛がペナルティエリアの左端でパスを出し、そのボールを長友が角度のないところから決めたものだった。2分後の2点目は、左サイドからのFW大久保嘉人のボールを受けた中村憲剛が自ら豪快に蹴りこんだ。

「4-2-3-1」が憲剛の潜在能力を引き出した。

 この日の日本は、前線中央に大久保、その両サイドの高い位置にMF中村俊輔とFW岡崎慎司が構え、中盤と頻繁にポジションチェンジを繰り返してパスサッカーを展開した。後半の2得点は、それぞれ右サイドに流れていた大久保と左サイドの長友からのクロスを、60分に岡崎が、77分に交代出場の矢野貴章が押し込んだものだった。

「憲剛さんの特徴はみんな知っているし、いいパスが出てくる。FWもそれをもらうための駆け引きをしているし、それが全体のスピードアップにつながっている」と長友は言う。中村憲剛本人も「周りのバックアップがすごくて、合わせてきてくれていると感じる。手応えは試合毎に高まっている」と話し、その口ぶりは新たなシステムへの確かな自信を感じさせた。

【次ページ】 油断こそがW杯出場を阻む障害である。

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