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エンジェルス、チーム名変更の大騒動 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byYasushi Kikuchi

posted2005/02/03 00:00

エンジェルス、チーム名変更の大騒動<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 いよいよキャンプインを目前に控えた今、ロサンゼルスが日本の任侠映画にも引けをとらない“地元チーム”の覇権をかけた抗争が本格化し、ちょっと面白いことになっている。

 すでに日本でも報じられているように、エンジェルスが先日、球団名を変更したことが物議を醸し出しているのだ。新球団名は「ロサンゼルス・エンジェルス・オブ・アナハイム」。ロサンゼルスを冠に使うことに、ロサンゼルス側はもとより地元アナハイムからも反発を受けているのだ。

 昨年このコラムでも何度か取り上げたように、事の発端は昨年オーナーに就任したモレノ氏の大胆ともいえるマーケティング戦略だった。ファン獲得を目指し、大胆な大型補強でスター選手を獲得し、さらにはポケットマネーを投じてホーム球場の改装を手がけたりした。またファンやスポンサーの拡大を目指し、ドジャーズのお膝元ロサンゼルスにまで広告展開し、大いに注目を集めていた。そして昨年から遠征用のユニフォームから「アナハイム」の文字を削除。すべて「エンジェルス」と統一することで、モレノ氏は近い将来ロサンゼルスを冠にしたい意向があるらしいと、地元紙でも報じられていた。まさに今回はそれを実行したというわけだ。

 ここで日本の皆さんにはロサンゼルスとアナハイムの位置関係が曖昧かと思われるので多少補足を加えると、確かにアナハイムはロサンゼルス近郊都市として認識されているが、行政区分で考えると全く別物なのだ。米国の場合、州→カウンティ(郡)→市という単位で区別されるが、ロサンゼルスはロサンゼルス郡、アナハイムはオレンジ郡と分割されてしまう。つまり「税金も払わないチームが冠に使ってほしくない」というロサンゼルスの言い分もわかるし、「なぜアナハイムなのにロサンゼルスを名乗るのか」というアナハイムの憤りも納得できるのだ。

 しかし以前にも紹介したが、エンジェルスの球団創設当初は、アナハイムを本拠地にしながらロサンゼルスを冠していた(後カリフォルニアに変更)のは紛れもない事実。さらにNFLのニューヨーク・ジャイアンツや、ニューヨーク・ジェッツなどは、隣のニュージャージー州に本拠を置きながら堂々とニューヨークを名乗っている。エンジェルスの件では今後訴訟問題まで発展する可能性もあるが、はっきりした基準がない分、大変な論争を巻き起こしそうだ。

 ところで、もう一方の当事者ドジャーズのマッコート・オーナー。奇しくもことらも昨年オーナーに就任したばかり。昨年はお手並み拝見とばかりに、エンジェルスの積極的な戦略を黙認してきたが、さすがに今回ばかりは不快感を顕わにした。とはいえ、このオフにエンジェルスへの対抗策を講じるどころか緊縮財政を断行。選手の年俸総額を下げる一方で、球団職員の一部解雇を行うなど、モレノ氏とは対照的に消極的な姿勢が目についた。

 名称変更ばかりか、このオフも大幅な戦力補強を行ったモレノ氏。その野心は留まることを知らない。先日NBA取材からの帰途、ロサンゼルスのダウンタウンにあるステープルス・センター近くで、にっこり微笑むギャレット・アンダーソンをあしらったエンジェルスの広告をみつけた。その瞬間、任侠映画ではないが「もうメジャーの世界も新しい時代になったんですよ、ドジャーズさん」と、モレノ氏の声が聞こえてきそうだった。

 伝統を守りながら地元利権を維持してきたドジャーズ一家に対し、力を蓄えながら勢力拡大を狙うエンジェルス組。血で血を洗う勢力争いが幕を切って落とされた。今後も逐一報告していきたい。

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