MLB Column from WestBACK NUMBER
今NPBに求められていること。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byREUTERS/AFLO
posted2008/12/10 00:00
メジャー入りを表明していた田澤純一投手が12月4日、レッドソックスと3年契約を結び、本拠地フェンウェイ・パークで記者会見を行った。レッドソックスの他に、レンジャース、マリナーズ、ブレーブスが条件提示するなど、メジャーではこのオフ一番人気の日本人選手だったようだ。
今回は日本のプロ野球を経ずにメジャー契約を結んだ初めてのケースという以上に、ドラフト候補選手のドラフト指名を拒否しメジャー入りを表明したことで、メディアも「田澤問題」と煽り立て大々的に報じた。結局は日本の12球団は強行指名に二の足を踏み、田澤投手は希望通りメジャー入りを果たすことができた。だが、そこから最悪の“副産物”を生み出してしまった。NPBが、ドラフト指名を拒否した選手が海外を経て日本に戻ってきた場合、高校出身者なら3年間、大学・社会人出身者なら2年間ドラフト対象から外すことを決定したことは周知の通りだ。何とも前時代的な決定に開いた口が塞がらないのだが、この決定がひいては自分たちの首を絞める可能性があることをNPBの人々は理解しているのだろうか。
そもそもレッドソックスが主張しているように、これまでも日本のプロ野球を経ずに多くの選手たちがメジャー球団と契約してきている。田澤選手との違いはドラフト指名候補かどうかだけで、あくまで日本球界の“お家事情”でしかない。メジャー球界から同じアマチュア選手だと言われれば、それまでのことでしかない。
確かに、日本球界には「日米間にドラフト候補選手獲得を自重するという紳士協定があった」という共通認識は存在したと思う。しかし、そういった口約束がまったくあてにならないことぐらい、すでに経験済みのはずだ。1995年に野茂英雄氏がドジャースと契約した際も、近鉄は契約に同意しない野茂氏を他チームに移籍させないために任意引退選手扱いにしたものの、ドジャースに「任意引退選手もフリーエージェント(FA)」と主張され、結局野茂氏のメジャー移籍をどうすることもできなかったではないか。日米間にきちんと文書化された規則が確立しない限り、今回のように紳士協定など簡単に反故にされてしまうものなのだ。
前述通り、プロ、アマチュア問わず多くの日本人選手が米国に流出している現状を見ていれば、遅かれ早かれ田澤投手のような考えを抱く選手が出てくるのは、“想定内”のことだったはずだ。その対策を事が起こるまで講じようとしなかったNPBの怠慢が問われて然るべきだろう。