MLB Column from WestBACK NUMBER
今NPBに求められていること。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byREUTERS/AFLO
posted2008/12/10 00:00
さらにNPBが下した今回の決定は、アマチュア選手の立場からどう映るだろうか? もし田澤選手が順調に推移し、早い時期にメジャー昇格し、日米で注目されるような活躍をしたとしよう。ドラフト候補選手の中には、「直接メジャーにいってもあれだけの活躍ができるのか」と考える選手も出てくるだろう。さらに今回の田澤投手の契約(米報道では3年300万ドル)をみてもわかるように、日本でドラフト1位指名される以上の契約を獲得できる可能性が高い。そうなれば、つまらない“足枷”があることで、逆に「メジャーである程度稼いで引退してもいい」という覚悟でメジャー挑戦するアマチュア選手が増えてしまうのではないか。また田澤投手の成功で、メジャー側もプロ出身のFA選手よりも廉価で長期間にわたってプレー可能な有望アマチュア選手獲得に積極的になり、紳士協定など完全に雲散霧消してしまうだろう。
1995年の野茂氏のドジャース入りから14年が経過した。田澤投手のみならず現在のアマチュア選手たちは、日本のプロ野球と同様に(下手をするとそれ以上に)メジャーで活躍する日本人選手をブラウン管で見ながら育ってきた世代なのだ。彼らのメジャー志向は間違いなく自然の流れだといえるし、その流れは田澤投手の活躍次第でさらに勢いを増していくはずだ。
今NPBに求められていることは、アマチュア球界に規則づくりを要望するのでなければ、選手を脅すことでもない。一刻も早くMLBとの間に文書化した規則をつくるしかないのだ。例えば、NPBからMLBに対し毎年プロテクト選手を公示し、MLBはそれらの選手に対し一定期間獲得交渉は行えない等、両者の間で紳士協定などではなく明確な取り決めをすればいいことではないだろうか。
もちろん田澤投手のような選手が続出することは、NPBにとって大きな問題であるのは十分に理解しているつもりだ。しかしその対策が、選手の将来を脅かすような対策を講じることではないことだけは断言できる。即刻今回の決定を破棄し、MLBとの協議を本格化していってほしい。