岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER
南アフリカW杯アジア3次予選 VS.オマーン
text by
木ノ原句望Kumi Kinohara
photograph byNaoya Sanuki
posted2008/06/10 00:00
終了の笛と共にチームメイトとハイタッチを交わし、試合を終えた選手たちが満面の笑顔で引き揚げてくる。そこから、勝利と内容から得た、彼らの手応えが伝わってくる気がした。
6月2日、ワールドカップ3次予選オマーン戦で、日本はそれまでの低迷ぶりとは別人のようなプレーを見せて3−0で快勝した。
FW玉田圭司を1トップに、その後ろに大久保嘉人、左ウィングにMF松井大輔、右に中村俊輔、中盤の底に遠藤保仁と長谷部誠を配し、中盤が流動的に動いて絡み、速いテンポでパスを回す。そこに、左サイドバックの長友佑都と右サイドバックの駒野友一がオーバーラップで顔を出し、チャンスにはDF闘莉王も攻撃参加を見せる。
労を惜しまない動きで相手を追い込み、ボールを奪い、速やかに仕掛ける。特に、縦への速いボール出しは、レギュラーメンバー5人をケガと出場停止で欠くオマーンの守備陣を背走させ、混乱させるのに十分効果的だった。
前半10分の、遠藤のCKにあわせたDF中澤佑二の先制点でチームに余裕が生まれたことは言うまでもないが、流れの中から生まれた2点目、3点目は、チームプレーに個人の特性がうまく活かされた結果の得点で、この日の日本のパフォーマンスを象徴していたように思う。
前半22分、ハーフウェイラインの手前から中村が、前線に上がっていたDF闘莉王にピンポイントのロングクロスを送る。闘莉王が頭で落としたところに、大久保がノーマークで走りこんで左隅に一撃。闘莉王の動きを見逃さなかった中村の眼力とセンスは、やはり特筆すべきものだろう。
そして、そのセルティックMF自らの得点となった後半4分の3点目は、松井の左サイドでの押しの強いプレーから生まれた。
長友から左タッチライン沿いに出された縦のボールが相手に奪われそうになったところを、松井が寄せてマイボールにし、相手ディフェンス数人を引き寄せながらドリブルで中へ切れ込んでパスを送った。ファーサイドの中村は、相手一人をかわしてフリーになると、右足を振り抜いた。
「絡みながらスペースを作って飛び出していく動きがすごく重要」と松井は話したが、ルマンで4シーズンを戦い抜いてきた彼には、「強引にでも行くべきところ」というツボのようなものを察知する感覚があるのだろう。
岡田監督はこのチームに、選手間で話をして攻撃を構築していくことを求めているが、この日のプレーを見ると、相手が本来の力を出していなかったとはいえ、チーム内の試行錯誤が少しずつ形になってきていることがうかがえる。
中村も、「誰が何をするのかというのがわかっているから、他の人も走り出している」と話し、チームの連携がレベルアップしたことを示唆した。他の選手も「もっと連携はよくなると思う」と、この試合から得た手応えを異口同音に口にした。
だが、5日後にアウェイで再度対戦するオマーンの力がこの程度だと考えるのは危険だ。7日の試合では、出場停止だったボランチのアーメド・ムバラク、MFタラール・アルファルシ、DFカリファ・アイルの3選手が戻ってくる。しかも40度という高温の開催地マスカットで、走り回るプレーをするのは難しい。アレンジが必要だろう。
ただ、勝つために気持ちで負けないという最低限必要な要素は、この日のプレーに出ていた。
土台は築かれつつあるようだ。