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スター不在なのにセリエAが面白い!
~開幕2戦で見えた“化学反応”~
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2009/09/06 08:00
ブレーメンから新加入のジエゴが期待通りにユーベを牽引している
意外、といっては言い過ぎかもしれないが、2節を終えたセリエAが面白いことになっている。連勝スタートを切ったのは、ユベントスとジェノバ勢ら4チームだが、各チームに無視できない化学反応が起きつつあるのだ。
開幕2戦目のローマ戦を今季の試金石と位置づけたユベントスは、個のタレントを前面に打ち出した新スタイル「ブラジリアン・ユーベ」で臨んだ。ジエゴとフェリペ・メロ、2人の新獲得MFが目の覚めるようなスピードとテクニックで、ドリブル・シュート3発を決め、敵地で快勝。新司令塔ジエゴと大型2トップ(イアクインタ&アマウリ)との順応も上々で、打倒インテルの一番手はユーベ、との印象を強くした。
好対照な古豪2チームが首位に並ぶ。
そのユーベと競って首位に躍り出たのは、サンプドリア、ジェノアの両古豪。だが、その戦い方は好対照だ。
新監督デル・ネーリによるサイド攻撃に特化した4-4-2を導入したサンプドリアは、カターニャとウディネーゼ相手に計5発の快勝。カッサーノとパッツィーニのFWコンビは、かつて90-91年シーズンにスクデットをもたらした「マンチーニ&ヴィアリ」の黄金コンビの再来といわれる。全盛期の切れ味を完全に取り戻した現在のカッサーノには、一見の価値がある。
一方のジェノアは、開幕戦でローマに打ち勝つも、FWの故障が相次いだ2戦目ではセットプレーによる最少得点で勝ち点3をもぎ取った。昨季の派手さは薄れたが、代わってしぶとさが加わりつつある。ジェノバ勢はそれぞれ6節と8節に王者インテルをホームに迎え撃つ。
インテル、ミラン……明暗分かれた名門の戦力。
開幕戦で昇格組バーリにまさかのドローを喫したインテル。リーグ史上初の8月開催となったミラノ・ダービーで、モウリーニョは賭けに出た。前々日にレアル・マドリーから移籍手続きが完了したばかりのMFスナイデルをトップ下でいきなり先発させたのだ。プレースキッカーまで任されたスナイデルは、水を得た魚のように躍動しチームを勝利に導いた。
これは「長いシーズンを考えたときに、チームのバランスが取れるトップ下選手が必要だ」と訴えてきたモウリーニョにとって、最後の1ピースが揃ったことを意味する。誰もが予想しなかった4-0の圧勝劇でチームは上昇気流に転じた。上機嫌の指揮官は「イブラが抜けたことでよりチームの完成度は高まった。CLのバルサ戦が楽しみだ」とも。エトー&ミリートにチアゴ・モッタを加えた前線のオートマティズムと破壊力は、他チームが到達しがたいレベルにある。
ダービーでいいように翻弄されたミラン守備陣は、インテル攻撃陣のための格好の実戦練習台にされたようなものだ。