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捲土重来を期すために。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byBongarts/Getty Images/AFLO

posted2008/12/25 00:00

捲土重来を期すために。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images/AFLO

 12月第2週に前半戦を終了したブンデスリーガは来年1月30日の再開まで長期の冬休みに入った。昇格組のホッフェンハイムが「秋の王者」となり、安定していたはずのブレーメンとシャルケ04はチーム内のゴタゴタにより低迷、下位にはお馴染みの顔ぶれが揃うなど、順当と波乱が混じり合う途中経過となっている。

 各チームの順位を見ると、監督を含めたフロント全体の管理能力というか、実務と経験の優劣がものを言ってるような印象を与える。ホッフェンハイムについてはこれまで何度も書いてきたように、オーナーの情熱・監督の指導力・怖いもの知らずの若手選手の3つが融合して、この素晴らしい結果を導いた。しかし彼らの躍進もそろそろ限界ではなかろうか。ハイレベルのサッカーを継続するにはあまりに経験不足だからである。その点はオーナーも認めていて、最近も「最後はバイエルンが優勝する」と断言したほど。このあたりはさすがに大企業の経営者である。冷静沈着な計算と現状分析ができているのだ。

 でもまぁ、“毎年バイエルン”というより、こんな小さな田舎のチームに優勝してもらったほうが、愉快、痛快、爽快であることに間違いない。仮に来季、ホッフェンハイム対チェルシーなんて組み合わせがチャンピオンズリーグで実現したら、世界の目は一気にドイツに集まるだろう。そしてそれは、いかがわしい外国人投資家の本性を炙り出すキッカケにつながる。ローカルVSビッグクラブ、無名VSスーパースター、200億円VS500億円投資(オーナー対決だけど)、そこへドイツを捨てて出て行ったバラックが加われば、金にまつわる役者が勢ぞろいする。人間の欲望と嫉妬が渦巻くスタジアムは、“素敵な風景”(皮肉ですけど)になること間違いなしである。

 バイエルンは当初、クリンスマンの米国流マネジメントとマルチカルチャーな価値観が選手とクラブを戸惑わせ、なかなか調子の波に乗れなかった。しかし彼らには底力があった。同勝点で2位につけたのだ。当事者が話していることだが、「国内で台頭してきたチームを弱体化する方法」を彼らは実によく分かっている。それは「エース級の選手をこちらに引き入れる」ということ。つまり金という餌で釣ってライバルの牙を抜くと同時に自らをスケールアップしていくのである。

 現在、バイエルンの標的となっているのはHSVのFWオリッチ、シュツットガルトのFWゴメス、ホッフェンハイムのDFコンパーだ。このうちオリッチについては契約が切れる今季末での移籍が濃厚。HSVは3億3000万円の年俸を10%アップ(それだけかよ…)して交渉するようだが、バイエルンはそれを大きく上回る5億6000万円でオファーを出した。ユベントスも5億円近い金額を提示している。29歳と若くないオリッチにしてみれば、金と名誉で一挙両得になり、HSVへの義理もないわけだから、もう答えは出たも同然である。

 シャルケとブレーメンの不振には共通した原因がある。選手のワガママとフロントの無能がますますチームをダメにしているのだ。スター気取りが甚だしい選手を手なずけることができなければチームは一枚岩とならない。クラーニィを筆頭にシャルケは、そういったタイプの選手が多すぎるのである。それをコントロールできず、また無駄な買い物を続けるGMがいまだに居座ることは理解できない。誰かミュラーGMの首に鈴をつけられる人、いませんか?

 ブレーメンのジエゴは、そろそろ環境を変えたほうがよい。彼にはテクニックを生かせるスペインへの移籍を薦めたい。相手選手への暴力行為、あくどい反則、ロッカールームでチームメイトと乱闘、練習時間に遅れ、そしてクラブの了解を取らずに北京五輪へ参加……。おかげでチームはずいぶんと損をしている。ジエゴに頼る戦術ではブレーメンは安定性を欠き、チームの底上げも期待できない。彼ほどの実力なら、CLで勝てて、もっとパフォーマンスを発揮できるチームでやるほうが己の身のためだ。

 落胆したチームは、私の“30年前の恋人”であるボルシアMGで決まりである。2部で圧倒的な強さを誇ったものの、フロントは上位リーグを甘く見すぎた。そのため、すべてを台無しにしてしまったのである。それまで5年間チームに尽くし、将来性もあった23歳のコンパーをベンチウォーマーに格下げして、あげくの果てにホッフェンハイムへ1200万円で売り飛ばしてしまったのは完全な失策だ。この選手、先月はドイツ代表のデビューを飾った。ヘタフェに移籍して大活躍するポランスキも、昨季までボルシア所属の選手だった。

 優秀な選手を2人も手放してしまったフロントの目は節穴である。一方で、怪我のため出場機会のないベテラン35歳のFWノイビルを辞めさせず、またGK2人をコロコロ交代させたりと、現場の管理には大きな問題が残っている。事情を知れば、声を大にして「責任者、出てこい!」と叫ぶしかない。19歳のマルコ・マリンは優秀な選手だが、このままボルシアにいたら伸びシロがなくなる。本人のためを思えば、ジエゴ同様に移籍を薦めたい。

 降格ゾーンにはボーフム、コットブス、カールスルーエも含まれているが、彼らはいずれもエレベーターチームで栄光とは無縁なのだから、落ちたって私は同情しない。そうなったら私は別のチームに“希望”を託さなければならない。希望、キボウ、Hope……、ん? そうだ、1つだけあるじゃないか。希望が丘という名のチームが。

 というわけで、回りくどい言い方をしてきましたが、恒例のドイツサッカー大賞の受賞チームは、ホッフェンハイム(希望が丘)に決定しました。

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