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スコラーリへの応援歌を待ちわびながら 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byDarren Walsh/Chelsea FC via Getty Images/AFLO

posted2008/12/19 00:00

スコラーリへの応援歌を待ちわびながら<Number Web> photograph by Darren Walsh/Chelsea FC via Getty Images/AFLO

 去る12月14日、チェルシーファンは期待に胸を膨らませてスタンフォード・ブリッジに集結した。かくいう筆者もその一人。この日の“ホーム”には、ウェストハム監督という立場ながら、「クラブ史上最も偉大な選手」と崇められたジャンフランコ・ゾラが帰ってくることになっていた。英雄を迎えての90分間の末に3ポイントを手にすれば、2週間ぶりのリーグ首位復帰も実現するはずだった。

 スタンドではキックオフ前からテーマ曲の大合唱。『君の瞳に恋してる』(80年代のボーイズ・タウン・ギャングによるバージョンが有名)の“I love you baby~”というサビをもじって“Gian-fran-co Zola~”と始まるお馴染みのチャントだが、続く一節は、昔の“La la la la la la”から、“He's takin' West Ham down(ウェストハムを降格に導いてくれる)”へとアップデートされていた。ファンは、ゾラ帰還と首位奪回の前祝とばかりに新バージョンを熱唱した。

 だが、引分け(1−1)に終わった試合後に、ホームサポーターの歌声は聞かれなかった。代わりに彼らが口にしたのは自軍へのブーイング。格下を相手にあらためて確認された、チェルシーの現状に対する不満は、盟友との再会で得た喜びを上回る大きさだったのである。

 ウェストハムは、守備力が高いわけでもなければ(執筆時点でリーグ内ワースト6)、ことさらチェルシーを警戒していたわけでもない(この日のシステムは4−4−2)。それでもチェルシーは“止められた”。センターハーフのスコット・パーカーに代表される、執拗なプレスと果敢なタックル。後半ロスタイムに入ってもドリブルを仕掛けたバロン・ベーラミのような、サイドハーフによる一心不乱のアップダウン。ハードワークによってパス主体の4−3−3を封じられたチェルシーのサッカーは、「つまらない」と酷評された昨季までと大差はなかった。

 それどころか、対戦相手に与える脅威は低下しているとさえ言える。センターFWのディディエ・ドログバの出場時間が少なく、ロングボールという奥の手を使えない場合が多いからだ。代役のニコラ・アネルカはリーグ得点王争いをリードしているが、先制ゴールはたったの2度しかない(この稿の執筆時点)。言い換えれば、相手が前懸かりになって守備に隙ができ始めるまでは頼りにならないのである。その結果が今季チェルシーのホームでの苦戦だろう(17節までに14ポイントのロス)。

 問題の解決策はふたつ考えられる。ひとつはドリブラーの獲得だが、夏に逃がしたロビーニョ(現マンチェスターC)と同等の実力者を今冬に獲得することは不可能に近い。ならば、ドログバとアネルカを併用する時間を増やし、足元主体の攻撃展開にダイレクトなアプローチを折り混ぜるしかない。これがふたつ目の解決策だ。ツートップの陣形としては、攻撃的MF陣を活かす上でも4−1−3−2が妥当だろう。それでも、サイドからの攻めが両SBに偏るという問題点は消えないが。

 難題に取り組むルイス・フェリペ・スコラーリ監督は「練習あるのみ」と語る。初めてファンのブーイングを浴びた新監督は、これからが腕の見せどころだ。見事、チームを再びホームでの連勝街道に乗せられれば、その時こそ、スコラーリにもサポーターからチャントが贈られるはずだ。敵軍の将となっても謳われ続ける、チェルシーの英雄ゾラと同じように。

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