オリンピックへの道BACK NUMBER
日本ジャンプ界の未来を託すドーナツ。
ベテランジャンパー船木和喜の情熱。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShigeki Yamamoto
posted2011/06/07 10:30
自ら開発に関わったドーナツを笑顔で売る船木。収益の一部はスキージャンプ少年少女の育成のために活用される
日本ジャンプ界の将来への危機感が船木を突き動かした。
これらの活動の理由を、船木はこのように説明した。
「将来、50~60歳になったときに、同じ会話ができる仲間がいないと寂しいじゃないですか。今のまま、子どもが少なくなっていけばチームも減って、コーチとして雇用される機会もなくなっていく。そうなると、例えば指導が得意な後輩もいっぱいいるのに、ジャンプにかかわることができない。現場から人がいなくなっていけば、昔話ならできても、将来の話とかできないじゃないですか。50~60になったときに一人ぼっちはいやだなと思って、いろいろやっているんですよ。会社でも選手を雇用できるようにしたいと思っているので、どんどんやらなきゃ」
スキー競技人口は、減少の一途にあると言われる。
ジャンプも例外ではなく、ことあるごとに競技の将来への危機が語られてきた。船木自身は、長野五輪後から育成の支援をしたいと考えていたという。今日の状況と照らし合わせれば、船木にとって自然な活動なのだろう。
「こうした活動を始めたあたりから、成績もよくなってきたんです」
とはいえ、自身の競技生活のある中での活動である。
営業に駆けずり回り、会社を立ち上げ、各地の物産展に足を運ぶ。一方で、練習は以前とかわりなく行なっているのだ。競技の行く末を案じての行動であるにしても、競技活動に専念したいと思っても不思議はないし、はたから見れば決して楽ではないように思える。
だが、船木は言う。
「いや、もともとジャンプのほかに、遊んでいる時間もあったわけで、それをあてればいいわけですから、ストレスなんて感じないですね」
そして、こう続けた。
「こうした活動を始めたあたりから、成績もよくなってきたんですよ。やりたいと思ったことをやっているのがいいのでしょうね」