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日本ジャンプ界の未来を託すドーナツ。
ベテランジャンパー船木和喜の情熱。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2011/06/07 10:30

日本ジャンプ界の未来を託すドーナツ。ベテランジャンパー船木和喜の情熱。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

自ら開発に関わったドーナツを笑顔で売る船木。収益の一部はスキージャンプ少年少女の育成のために活用される

 5月28日。長野駅近くにある百貨店「ながの東急」。5階で開催されていた北海道物産展の一角に、多くの人々が集まっていた。

 ショーケースにはドーナツが並ぶ。その向こうに立ちドーナツを売っていたのは、スキー・ジャンプの船木和喜だった。

 長野五輪で2つの金メダルと1つの銀メダルを獲得したほか、ワールドカップで日本選手では史上最多タイの15度の優勝など、日本のジャンプ史に名を刻む名ジャンパーである。

 次々に訪れ、ドーナツを買い求める人々の姿。

 長野の大活躍から13年経った今も、船木の名は、脳裏に焼きついているようだった。

食品販売で得た利益で日本の未来を担う少年ジャンパーを育成。

 現在も、現役選手として第一線で活動している船木が、店頭でドーナツを販売するに至ったのは、次のような経緯からだった。

 数年前のことだ。船木は、自身の活動を支えてくれるスポンサーを探すのとともに、各地にあるジャンプ少年団の活動のために、スポンサーとなって支援してくれる企業を探していた。飛び込みでの営業である。

 すると、ある食品会社から、「お金をあげることはできないけれど、餃子の販売権をあげるから、そこで得た利益を使ってみてはどうか」と提案を受けた。

 販売権とは何か、どういう仕組みで運営すればいいのか。何も分からないところから、船木は勉強を始め、3年前に食品販売卸会社「えにし」を設立。社長には、以前から競技の今後について話し合っていた元ジャンパーの吉田拓氏が就任した。

 そして各地で行なわれる物産展などに出店。餃子のほかにも、コロッケなどを販売し、その収益の一部を、育成事業にあててきた。今回の出店では、船木が開発に携わったドーナツや牛乳パン、コロッケ、海鮮弁当などが並んだ。

 実は、えにしの事業ばかりではなく、船木は一昨年から、出場した大会での飛距離1mにつき10円を寄付するなど、ウインタースポーツに取り組む子どもたちの育成に、力を尽くしてきた。

【次ページ】 日本ジャンプ界の将来への危機感が船木を突き動かした。

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#オリンピック・パラリンピック

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