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ジャイアンツは昔のタイガースのようになってしまった。 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

PROFILE

posted2003/10/14 00:00

 ジャイアンツの監督が、原から堀内に代わった。

 ぼくは原のファンでも何でもないが、こんどばかりはいささか原に同情した。野球評論家の誰かが、

 「ようするに、ジャイアンツも昔のタイガースのようなつまらないチームになってしまったということだよ」

 といっていたが、辞任会見でいいたいこともいえず、口を真一文字に結んで言葉を探していた原の表情に、それがよくあらわれていた。

 監督とフロント、監督と選手、その他もろもろの派閥間の対立など、チーム内のトラブルはかつてタイガースの専売特許だった。ジャイアンツもそういうチームになってしまったということである。

 フロントが原に何の相談もなく来期のコーチ編成を進めてしまったのが、原が怒って辞表を出した原因といわれているが、今年の原はそれ以前からオーナーに侮辱されどおしだった。去年は日本一になって名監督と持ち上げられ、このまま10連覇をやってもらうとまでいわれていたのに、ひとたび負けがこみ出すと、

 「原にはカリスマ性がない」

 「日本一に慢心している」

 「タイガースに3連敗したら、監督続投の話はべつだ」

 と、いいたい放題のことをいわれつづけたのである。

 これで黙ってなお監督の地位に恋々としたら、世間からあいつは男かとバカにされるだろう。

 しかし、思えばジャイアンツはもうずいぶん前からつまらないチームになりはてているのである。

 かつては、ジャイアンツの選手は現役を引退すると、他球団が争ってコーチに迎えたものだった。ジャイアンツの野球が手本とされていたからである。しかしいまは、王がホークスの監督をやっているほかは、どこのチームのベンチを見てもジャイアンツ出身のコーチの顔は見られない。

 たとえば王は、広岡と野村のもとで野球をやった尾花を投手コーチとして迎えて、ホークスの弱体投手陣を立て直させた。かつてはスワローズ出身の選手が他チームのコーチになるなど考えられないことだったが、王でさえジャイアンツよりスワローズで野球をやった者のほうが優れた野球術を持っていると思っているということだ。

 それも、ジャイアンツのフロントが、監督の人選に野球術よりも人気を優先し、チームの野放図な野球がはびこるのをそのままにしてきた結果にほかならない。もうどこのチームもジャイアンツの野球にかつてのような敬意を払っていないのである。

 しかし、原の同情にあたいする辞任とはべつに、堀内を新監督にしたことには多少の希望を抱いている。それは、堀内がかつてのすばらしいジャイアンツの野球を知る、おそらく最後の一人だからである。

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