プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ノムさん退任にみるプロの厳しさ。
球団経営にもっと危機管理意識を!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/11/09 10:30
最終戦となったCS第4戦の試合後、いつも以上の報道陣に囲まれる野村監督
最近の監督人事には“仁義”が無いのでは?
こうしたスタッフの置き去りとは違うが、最近の球界人事には“仁義”はまったくなくなってきている。
監督を退任したら、すぐにライバルチームのユニフォームを着るのもその一つだ。
思い起こすとその先鞭をつけたのもヤクルト監督を退任するとすぐに阪神監督に就任した野村監督だった。その後には中日監督から阪神の監督に鞍替えした星野仙一現阪神SDの例もある。
その昔、巨人を石もて追われた三原脩は西鉄ライオンズの監督として再起を図り「打倒巨人」に闘志を燃やした。だが、そのときは1949年に巨人監督を辞すと、その後は名ばかりの総監督として日がな大好きな碁を打ちながら一年間の“浪人生活”を過ごしている。そして1951年に西鉄ライオンズの監督に就任。その後の黄金時代を作り上げることになる。
だが、最近は右から左にボールを持ち替えるように、同一リーグのライバルチームの監督へと転身する。そこには世話になったチームへの仁義もへったくれもない。
監督が移れば秘密も漏れる……。情報管理に無策な野球界。
一般社会でも日本的な終身雇用から転職、ヘッドハンティングなど欧米の契約概念が次第に広まってきている。
その中でむしろ一般企業の方がその人材と情報を守ることに大きな努力を払っている。人が動くということは、その人間の持つ情報も同時に動くということである。
野球界のそういう点での危機意識の薄さ、無防備さは一般企業からは信じられないものだという。
少なくとも最高機密に触れる監督ぐらいは、他のチームに移るときには必ず1年以上の期間を空けるなどの厳しい制約があってもいいのではないだろうか。