Column from GermanyBACK NUMBER
シュツットガルト〜5年サイクルで再び花が咲くか〜
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byGetty Images/AFLO
posted2007/01/17 00:00
リーグ前半戦を4位で終えたVfBシュツットガルト。恒例となった冬休みの合宿地、中東ドバイで汗をかく毎日だが、後半戦はぜひこのチームに注目したい。なにしろ飛び切り若くて、前途有望な選手が揃っているのだ。選手の平均年齢は24.77とリーグ最年少。何をするにも恐れを知らぬ年齢の若者たちだけに、サプライズを起こす可能性が高いのである。
シュツットガルトは以前、政財界に睨みを利かせる大ボスがクラブ運営のすべてを牛耳っていた。それが大企業出身で経理に明るい会長に交代してからは、財政も人事も一気に透明度を増して近代的なクラブへと脱皮した。
クラブは大金を払って大物や外国人に頼る強化策を取らない。それよりも、近隣に点在する小さなクラブで原石を見つけ出し、この地方唯一の大都会チームへと誘うのである。10代半ばに入団した若者たちは、常識を知った大人たちによって技術、戦術、闘争心、加えて人間性まで養われる。しっかりとした教育は、「質実剛健」をモットーとするシュワーベン地方の気質が強く影響している。
そうやって生まれた選手が、FWマリオ・ゴメス、DFセルダル・タスチ、MFサミ・ケーディラ、MFクリスチャン・ゲルトナーらだ。彼らの年齢は19〜21歳。名前から分かるように前の3人は両親が外国人。しかし国籍はドイツである。この4人が今季のチームの躍進を支えている。とくにゴメス。入団5年目、ここまで55試合14点だが、今季だけで16試合8得点と大暴れ。タスチはDFながら今季15試合で2点、ケーディラは9試合で2点取っている。
私はここで10年前のシュツットガルトを思い出す。当時、ヨハヒム・レフ監督(現ドイツ代表監督)率いるチームは、バラコフ、エウベル、ボビッチのいわゆる“マジック・トライアングル”で大旋風を巻き起こしDFBカップに優勝、リーグ制覇まであと一歩のところに迫った。だがその直後、彼らは強豪チームへと引き抜かれ、シュツットガルトは低迷する。再復活したのは5年前。クラーニィ、ラーム、ヒンケル、フレブ、ヒルデブラントら20歳そこそこの若手が爆発して、チャンピオンズリーグではマンチェスター・ユナイテッドを打ちのめした。しかしながら、またもや主力が引き抜かれ、チームは若手中心で再出発を図らなければならなかった。
こうしてみると現在のシュツットガルトは臨界点直前の状況にあると言えまいか。まだリーグデビューを果たしていないが、19歳のDFベックと16歳のMFホセ・アレックスだって控えている。彼らも国籍はドイツだ。
そういうわけで、春休みの旅行でドイツサッカーを味わいたかったら、バイエルンやブレーメンじゃなく、シュツットガルトをお薦めしたい。ついでだけど、将来のドイツ代表選手を下見するつもりで出かけたって、損はしないはずだ。