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コパ・アメリカ正式辞退の内実。
日本サッカー協会、ふたつの誤算。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2011/05/19 11:55
元FIFA理事にして、『サッカーの国際政治学』(講談社現代新書) の著者でもある小倉純二日本サッカー協会会長をもってしても、今回の難題は解けなかったということか……
コパ・アメリカへの不参加が正式に決定した。
日本協会は回答期限となった17日に辞退する旨を主催する南米サッカー連盟(CONMEBOL)に文書で伝え、了承された。二転三転した“代表チーム派遣問題”はようやくピリオドを打ち、小倉純二会長は「極めて悔しいし、残念。しかし現状となるとコパ・アメリカにふさわしいチームはつくれないと判断した」と述べた。この決定を受けてアルベルト・ザッケローニも「震災によってこれまでにない例外的な年となってしまい、こうした苦渋の決断をしなければならなくなったのではないかと感じている」と協会を通じてコメントを出している。
再辞退に追い込まれたのは、欧州組中心のチーム編成が不可能になったことに尽きる。
具体的な数字として登録メンバー22人のうち、半数以上となる12人以上を欧州組で確保することを目指してきた経緯が協会側の説明で明らかになったが、ドイツを中心にほとんどのクラブから派遣を拒否された。招待出場の日本には招集の強制力が発しないために原博実技術委員長が欧州の各クラブを行脚して理解を求めたのだが、賛同を得られなかったという。
震災復興協力として、FIFAからのバックアップを期待したが……。
協会としての誤算は大きく2つある。
1つはFIFAからのバックアップを受けられなかったことだ。
日本協会は一度、辞退の意向を南米連盟に伝えた際、「日本の復興の力となりたい。大会に参加できるように全力を尽くして協力するので、再考してほしい」とアルゼンチン協会のグロンドーナ会長から“全面協力”を約束されたことで再検討に入っている。グロンドーナはFIFAの副会長を務めているため、この影響力が最大限に発揮されるだろうと協会は受け止めていたはずである。
しかし蓋を開けてみれば状況は違っていた。
日本が招集を願い出るクラブに対して要請を通達する南米連盟の協力はあっても、FIFAからの強い働きかけは皆無だった。
日本協会としてはなるべくFIFAに頼ることなく穏便にクラブを説得する方針にしていたものの、FIFAの“お墨つき”がなければ欧州のクラブを説得するのは難しかったというわけだ。
欧州は来年にEUROを控えており、各国リーグは来季、2週間近く早い開幕を迎える。チームづくりも早い段階からスタートするため、欧州のクラブが難色を示すのは当然だった。