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アトレティコ・マドリー 「攻撃力偏重の功罪」 

text by

横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

PROFILE

photograph byMutsu Kawamori

posted2009/02/26 00:00

アトレティコ・マドリー 「攻撃力偏重の功罪」<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

「このチームは皆が得点する。本当はフォワードであるフォルランとアグエロの仕事だけれど、シモンや俺にも攻める力はあるから、時々2人を役目から解放してやるんだ」とマキシ。

 ただ、そうはいっても一番当たりがあるのはやはり最前線の2人、中でもフォルランだ。序盤の1カ月近くをケガで休んだため、リーガでは17試合にしか出ていないが、すでに14得点している。アグエロほどのスター性はないが、決定力では決して引けを取らない。若きエースがコンディション問題を抱える今季、フォルランの存在はチームにとって心強い。

 彼はまた中盤と前線の繋ぎ役としても活躍している。1.5列目にはこれまでマニシェやラウール・ガルシア、エベル・バネガといった選手が試されてきたが、波があったり、気の利いたパスが出せなかったりで、どうにも頼りない。そこで運動量豊富、プレイに幅があるフォルランが下がってボールをもらい、前に繋ぐのだ。

 周りを活かす能力に長けたフォルランとアグエロのコンビネーションは、昨年の時点で珠玉に磨き上げられている。だから、ここから始まるアタックは面白い。2人でそのままゴールを狙いに行くこともあれば、サイドのマキシとシモンも仲間に入れて、パスを廻すこともある。ボールはワンタッチ、ツータッチで軽快に繋がれ、最後は鮮やかにゴールネットを揺らす。昨シーズンと同じ顔ぶれ、同じフォーメーションならではの滑らかな連係である。

「フォルランやアグエロとは完璧に通じ合っている。ボールをもらって次にパスを出すとき、2人がどのスペースにいるか、いちいち見なくてもわかるんだ」とシモンは言う。

 そのシモンの役割は、最終的にはもちろん得点とアシストだが、組織的な攻撃という観点からいうと崩しだ。縦に突破と見せかけて、中に切れ込んでいくようなドリブルは効く。ディフェンダーを引きつけたところで、ちょこんとパスを出せばアグエロやフォルランが合わせる。前が開いたら、得意の右足でゴールを狙えばいい。カウンターの際、センターバックのトマス・ウイファルシやヨン・ヘイティンガから長いパスをもらってタメを作るのもシモンの大事な仕事だ。

 同様に、マキシは右サイドからチャンスを作るが、彼の場合は得点のセンスを活かすプレイが良い。ツートップの裏をカバーするように動き、絶妙なタイミングでさっと飛び出して決めるのが実に巧い。ポジショニングに優れているので、味方からの絶好のパスばかりか、セカンドボールまでもが転がってくる。さらに、シモンともども中距離のシュートもある。ドイツワールドカップのベストゴールは、ペナルティエリアの外からマキシがボレーで決めた一発だ。

「自分らの攻撃力を、俺たちは自覚してる。何度かチャンスを作る中で、ゴールはきっと決められると信じている。だから、試合に勝つためには、守備陣の協力が必須なんだ」

 こう語るマキシによると、今季のアトレティコのベースコンセプトは「失点をゼロにして、チャンスで決める」。ところが、これまでの公式戦32試合でゼロ封はわずかに9度しかない(うち2度は2部Bの相手と対戦した国王杯)。総失点自体はそれほど多いわけでもないが、どうにも締まりがない。

「ヨーロッパ最高の1つに数えられる」とキャプテンが自負する攻撃陣を持つアトレティコはこの先どこまでいけるのか。カギを握るのはディフェンスになりそうだ。新任アベル・レシーノ監督のお手並み拝見である。

[チャンピオンズリーグ特集]攻撃者の美学。

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