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ついに登場? オレンジカード 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byRICHIARDI/AFLO

posted2009/03/02 00:00

ついに登場? オレンジカード<Number Web> photograph by RICHIARDI/AFLO

 国際サッカーの規則改定を評議するインターナショナル・ボールド(サッカー評議委員会総会)が今月28日にアイルランドで行われ、フェアな戦いを目指した新たなルールの導入が協議される。その中で最も注目されるのが、「オレンジカード」。つまりイエロー(警告)、レッド(退場)の中間に値して、警告以上に値する選手のアンフェアな行為に対して一時的退場処分を下すものだ。

 サッカーでは初の試みとなるが、アイスホッケーや水球ではこのルールが適応されている。反則するものを正当化する気はないにしても、スポーツは常にあるべき姿、つまりサッカーなら90分間11対11で正々堂々と戦いたい心境、それを観たい心境は誰にもある。また、退場者を出すことで、ゲームが一層ナーバスな展開になる傾向にあり、この荒れた状況を一時的に緩和する効き目があるとされる「オレンジカード」は理にかなっている。この導入案に関して、現在イタリア審判連盟のコリーナ会長も前向きに捕らえている。

 実際、「オレンジカード」ならず、「ブルーカード」で一時的退場処分の規則を取り入れている公式戦が存在する。バチカン市国が主催する「クレリカス・カップ」はカトリック僧侶をはじめとし、同市国に勤務する人たちの間で繰り広げられるカップ戦で、一時退場者のルール以外にバスケットボールやバレーボールで起用されているタイムアウト制も実施している。要するに主催者側はあらゆる規則を取り入れることで、プレーに興奮する僧侶たちを自己抑制させているのだろうと憶測する。

 この度の総会の主旨となる「オレンジカード」だが、現在のセリエAに必要なのは審判5人制だと私見を述べたい。

 確かにセリエAでは年々、リーグ戦でのファウル数が急増し、第25節は10試合中で400ファウルと今季最多ファウル数を記録した。某イタリアスポーツ紙の統計によると、リーグ前半期に比べると後半期のファウルは9.2%も増加している。2月22日のフィオレンティーナ-キエボ戦では警告が8枚も飛び交う激しい試合だったが、毎試合後、激論の元となるのはファウル数ではなくPKと無効ゴールである。例えば2月15日のミラノダービーでインテルの先制点となったアドリアーノの得点シーン。アドリアーノが右腕を軸にゴールを決めた一方で、その前々節、ミランのMFセードルフのゴールは左腕に当たったとして解消されている。今季リーグにおいて無いはずのオフサイド判定で無効となったゴール、また左記の判定ミスで得点となったケースは、私が知る限り20は超える。

 この打開策として審判をもう一人加入する案こそセリエAに不可欠なのだ。それを周知するイタリアサッカー協会は2シーズン前に審判5人制度をイタリア杯で導入。審判員の目が2つ増えた下、不可解な判定を封じる効果はあった。しかしながら、伊サッカー協会はセリエAから格下リーグ(旧セリエC2現在プリモディビジオーネ)に至るまでのレフェリー費用に年間約4500万ユーロも掛かっている現状に機嫌を損ねている。仮にレフェリーが1人でも増えると、おのずからコストも増す。こうして金銭問題がネックとなってレフェリーの5人制はお蔵入りした。となると、ローコストで且つ審判への負担も少ない「オレンジカード」は少なくとも現時点ではレフェリー5人制より信憑性がある。近いうちに各国で導入される見通しも強い。

 フェアな戦いの実現にむけて評議委員会も色々な対策を練っているが、マイクロチップ入りボールの誕生や、レフェリー5人制など費用が掛かりすぎる規正の導入には消極的な姿勢なのが実に気になる。

 そういえば、近年のイタリアのカルチョはレフェリーのカラーユニフォームをはじめ、カラーボールの起用など、数年前に比べると色彩豊かになった。ピッチ上のオブジェが定番の白、黒といったモノトーンに替わって一段とカラフルになってきた。この「オレンジカード」も、効き目より見栄えの良さに見惚れてセリエAに新登場することになるのかと考える私は偏屈なのだろうか?

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