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アトレティコ・マドリー 「攻撃力偏重の功罪」
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byMutsu Kawamori
posted2009/02/26 00:00
タレント揃いの前線に比べ、駒が足りないのが中盤から下。新監督に代わって、この構造は果たして克服されるのか……。
今季のアトレティコは評価しづらいチームだ。
結果だけを見るなら、そこそこ強い。リーガでは10月の終わりに一度10位まで落ちているが、そこからクリスマス休暇まで9試合負けなしを続け、バルサ、セビージャに続く3位で年を越した。
さらにチャンピオンズリーグでもリバプールとの2試合を引き分け、マルセイユとも敵地で引き分け、PSVはホームで破った。2部Bリーグに属するオリウエラと対戦した国王杯も合わせると全部で15戦無敗である。
ところが、試合の内容はそこまで素晴らしくもなかった。最終的に2点差、3点差を付けて勝った試合でも、主導権は相手に握られっぱなしだったことが何度かあった。勝って然るべき最下位クラスのチームを相手に、五分の戦いを繰り広げたこともあった。チャンピオンズリーグに集中する余り、その前後の試合はたいていパフォーマンスを落としていた。
年が明けてからは最悪だ。負けなしの日々はどこへやら、2月の1週目までの7試合は5敗2引き分けの白星ゼロ。順位を7位まで落とした挙げ句、ハビエル・アギーレ監督は解任されてしまった。
キャプテンのマキシ・ロドリゲスは言う。
「安定感に欠けているんだ。たとえば、強豪とされているチーム相手にとても良い戦いをしたかと思えば、次の試合で比較的弱いチームにやられてしまうといった風に。1年を通じて同じペースで行かなきゃならないのに」
不安定は長年アトレティコが患う持病。今シーズンは一試合の中でさえ顔を出している。
「最初にゴールを決めると、その後リズムがガクッと落ちてしまう。次はそうならないようにと思ってやっているのに、ほぼ毎回同じことになる。90分間集中し続けたら、もっと良いゲームができるはずだが……」
さらに、これは好みの問題だが、アギーレ時代はサッカーそのもののエンターテインメント度が低かった。中盤にクリエイティブな選手がいないので意外性のあるプレイは少なく、巧みな展開といったものには無縁。アトレティコに強いスポーツ紙の番記者によると、ファン10人のうち8人は文句を言っていたそうだ。「やっているサッカーがちっとも良くない」と。アギーレ監督の首がすっぱり飛んだのは、この点も少なからず関係している。
しかし、ボールがその退屈な中盤を一旦通り過ぎたら、その後は楽しめる。前にはセルヒオ・アグエロとディエゴ・フォルランのツートップ。左にはシモン・サブロサ、右にはマキシという優れたアタッカーが控えているからだ。
この4人にサブのフローレン・シナマ・ポンゴルを加えたアタックラインは、今季のアトレティコ一番の強み。今季はバルサのスリートップがずば抜けているのであまり目立たないが、アトレティコの5人もリーガ22試合で39得点と、申し分ないペースでゴールを重ねている。別格のバルサを除くと、アトレティコはリーガ最多得点チーム。その総ゴール47の約83%を5人で決めているのだから悪くない。