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ドラガン・ストイコビッチ 「もっと楽しいサッカーが見たくないか?」 【連載最終回】 

text by

中西哲生

中西哲生Tetsuo Nakanishi

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photograph byTadayuki Minamoto

posted2009/04/06 09:02

ドラガン・ストイコビッチ 「もっと楽しいサッカーが見たくないか?」 【連載最終回】<Number Web> photograph by Tadayuki Minamoto

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フィジカルによってサッカーの勝敗が左右されるという考えを、真っ向から否定したピクシー。ならば、日本のサッカーには何が足りないのか。
マンUとインテルの試合を例に、さらに踏み込んで解説する。

フットボール・インテリジェンスが、試合を左右する。

――あなたは、テクニックがフィジカルに勝ると思いますか?

「テクニックというものは、チームにとってフィジカルよりもはるかに重要だと思う。たとえば先日のチャンピオンズリーグ、インテルとマンUの試合をみればよくわかる。両者の違いというものがね。とてもシンプルでスピーディなマンUのプレーと、とても荒っぽいインテルのプレー。とてもハードで鈍重で、フィジカルにばかり頼るアドリアーノ。逆にマンUは、だれもが非常にクイックでシンプルにパスをつなぎ、サイドチェンジをしていく。 そしてロナウドが局面を打開する」

――全員の運動量が違いましたね。

「ポイントはフィジカルではない。テクニックと動き方、そして、フットボール・インテリジェンスなんだ」

――それが「答え」だと。

ドラガン・ストイコビッチ

「イエス。これが『答え』だ。実際、私が見たいのはマンUであってインテルではない。私はマンUの試合には『いいゲームだ』と拍手を送ることができるが、インテルに対してはそうはならない。チェルシーもそうだ。チェルシーはとてもフィジカルを重視したサッカーをしていた。数年前、モウリーニョが監督だったころは、ドログバやバラックがそれこそフィジカルにモノを言わせてプレーしていた。だけどマンUやバルセロナやアーセナルは違う。彼らはテクニックがあり、スピーディでエレガントなサッカーをするんだ。それはサポーターにとっても、見ていて楽しいはずだ」

――フィジカルに頼りすぎてはいけない。

「たしかにフィジカルは大事だよ。フィジカルがなければ高いレベルでのプレーはできない。たとえば去年のグランパスは、最後の最後でものにした試合が多かったのを覚えているだろ? それは最後の15分、20分というところで相手のフィジカルが落ちていくからだ。こちらはそこで杉本のような選手を投入して、より攻撃的にプレーして、点を取りに行く。それを実現するために、私は戦術とテクニックをより重視してきた。フィジカルは二の次だ。サッカーはラグビーやアメリカンフットボールじゃないからね」

もっと楽しいサッカーを。

――フィジカルコンタクトばかりではない。

「そう、選手にはもっと楽しませてほしい。なにかを見せてほしいんだ。フィジカルだけのチームが相対する試合は見たくない。ドリブルでもフリーキックでもサイドチェンジでもコンビネーションでも、それからヒールパスでも、なんでもいいから、なにかを見せてほしいんだ」

――現役時代にそうしたように。

「そうなんだ。もっとこっちを楽しませてくれよ、という感覚なんだ。それはサポーターも同じはずだ」

ドラガン・ストイコビッチ

――日本人にはそれができると。

「できるさ。でも、そのためにはだれかが必要だ」

――いつか、日本代表の監督をやるというのは?

「いや、自分がふさわしいなんてことは言わないよ(笑)」

――でもだれかが望むかもしれない。

「それはうれしいけど……。とにかくいま日本サッカーには、世界レベルを知り、戦術とテクニックを重視し、自信をつけられる人物が絶対に必要だ。でもそういう人間を探すのは、本当に難しい……」

――ハイウェイを知っている人。

「そう。日本サッカーはいつまでも一般道を走っていちゃいけない。 ハイウェイに乗って、早く目的地に向かって行かなければならないんだ」

 

ドラガン・ストイコビッチDragan Stojkovic

1965年3月3日、ユーゴスラビア・ニシュ生まれ。レッドスター・ベオグラード、マルセイユ、ヴェローナなどで活躍し、ユーゴ代表としては'90年イタリアW杯ベスト8に貢献。'94年、名古屋グランパス入り。'01年に現役を引退し、レッドスター会長などを歴任した後、'08年よりグランパスの監督を務める。

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