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ポルトガル 「ロナウド依存症からの脱却を」 / プレーオフ詳報
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byTsutomu Takasu
posted2009/12/01 10:30
本大会出場を決め、雄叫びをあげるぺぺ(下)とブルーノ・アウベス
母国のユニフォームを着たロナウドは、なぜ輝けないのか。
ボスニア・ヘルツェゴビナ、ゼニツァ。11月18日、首都サラエボから80キロほど北西にあるこの小さな町の、暗く古びたスタジアムで、ポルトガル代表は2010年ワールドカップ出場を決めた。
プレーオフ第1戦の0-1の結果をひっくり返そうと、ボスニア人の熱気満ちる会場で、ポルトガルはラウール・メイレレスの1点を守りきった。試合終了のホイッスルがなると、芝がはがれ荒れたピッチの上で、選手とスタッフはポルトガル国旗に包まれ、しばらくの間抱き合っていた。
誰もが想像できなかったポルトガルの苦戦。
数時間後――。代表チームが宿泊しているホテル・ゼニツァの5階では、長い宴が始まろうとしていた。
黒々としたひげを蓄えた恰幅のいいポルトガル代表の料理長が、こしらえた料理を運んでいく。ロビーをうろつく用具係やトレーナーも喜びを隠しきれない。
出場を決定付けたこの日の決勝点男、ラウール・メイレレスは嬉しそうに宿泊客の祝福に両手を掲げる。スタッフの頭をふざけて叩くペペ。シャワーを浴びる間も惜しんで祝ったのか、デコは気温10度だというのに短パン姿でチームメイトと談笑している。
そんな幸せな喧騒を傍らで眺めながら、代表チームに帯同しているフェルナンド・コウトは安堵の表情を浮かべていた。
「正直、今はまだ嬉しいというよりもほっとした気持ちだ。ケイロス監督もそうだろう。ひとまず最初のハードルを乗り越えたという感じだ。これからやるべきことは多いよ」
コウトのそんな心境は、多くの人が抱いたものだったはずだ。ポルトガルがこれほど苦しむことになるとは、誰も想像していなかった。予選終盤までデンマーク、スウェーデンの後を追い続け、ラスト2試合でプレーオフ進出となる2位になんとか滑り込んだ。ボスニアとの2試合を2-0で切り抜け、ようやく勝ちとった出場権。何故ポルトガルはこれほど困難な道を歩むことになったのか――。