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「エース候補」から卒業したい!
内海哲也は巨人の「柱」になれるか?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/05/02 12:30
開幕第2戦目となるヤクルト戦。内海は8回2アウト1、3塁の場面で久保裕也に交代している。9回は守護神・山口鉄也が登場し、3対0で巨人が勝利した
先発回避にもかかわらず中継ぎまでこなした内海の献身。
川本に一発を浴びれば同点、という場面だったため、左の内海よりも抑えられる確率が高い、と右の久保裕也をマウンドに送ったベンチの判断はセオリーとしては正しい。しかし、内海からすればいくら勝利投手になったとはいえ100%満足したマウンドではなかったはずだ。
続く20日の阪神戦はさらに顕著だった。
先発予定ながらも登板は中継ぎ。昨シーズンは阪神相手に3勝しながらも、防御率が5.47だったため、「相性が悪い」と判断されたのがその理由。結果、不慣れな条件のためか1回を1失点。降板した直後にチームが勝ち越したため、2勝目を挙げることができたが、「ああいうピッチングをしていては……」と内海の表情は暗かった。
だが、この日の彼の立ち振る舞いを見て、「信頼されたい」という意思が今まで以上に強いのだと感じさせられた。
内海は、中継ぎという役割を与えられたのではなく、望んだのだ。
「みんなを支えられるような存在として頑張っていきたい」
先発を回避されたということは、本来、ベンチに入らなくてもいいはず。しかし彼は、守護神の山口鉄也が不調で投げられないことなどから、自らベンチ入りを志願したのだ。
内海はエゴだけで「信頼を勝ち取りたい」と思っているわけではない。
己に課した、「柱」というスローガンがそれを如実に物語っている。
「今年は、ベテランと呼ばれるピッチャーがいなくなり、自分は投手陣のなかで上の立場になったので、みんなを支えられるような存在として頑張っていきたい」
自分の投球だけで投手陣を支えていければ、言うまでもなくベストである。
しかし、チームにアクシデントが起きたときリスクをかえりみず投げるのも柱としての役割であり、ひいてはチームの信頼を得ることにも繋がってくる。
そんななか、再び先発としてマウンドに上がった4月27日のヤクルト戦は、内海らしさが出ていたゲームだった。