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新人の活躍が目立つ西武から
“新人王”が誕生しにくい理由とは?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byYukihito Taguchi
posted2011/04/24 08:01
開幕2戦目で猛打賞と活躍した西武ドラ3ルーキーの秋山翔吾。俊足と堅守は評価されていたが、開幕前から打撃の強化にも積極的に取り組み、きっちりと結果を出している
前評判の高い新人の活躍が目立った開幕後1週間である。主な選手の成績を次に紹介する(略歴中の順位はドラフト指名順)。
●4月13日(水曜日)
秋山翔吾(八戸大→西武3位・外野手) 5打数3安打2打点
美馬学(東京ガス→楽天2位・投手) 1回、被安打1、失点0
●4月14日(木曜日)
伊志嶺翔大(東海大→ロッテ1位・外野手) 1打数1安打
●4月15日(金曜日)
牧田和久(日本通運→西武2位・投手) 7回1/3、被安打2、失点1
澤村拓一(中大→巨人1位・投手) 6回2/3、被安打6、失点2
岩見優輝(大阪ガス→広島3位・投手) 2回、被安打2、失点0
●4月16日(土曜日)
榎田大樹(東京ガス→阪神1位・投手) 2回、被安打1、失点0
●4月17日(日曜日)
秋山翔吾(八戸大→西武3位・外野手) 5打数1安打1打点
斎藤佑樹(早大→日本ハム1位・投手) 5回、被安打6、失点4(初勝利)
福井優也(早大→広島1位・投手) 7回、被安打6、失点2(初勝利)
ここに紹介していない駿太(前橋商→オリックス1位・外野手)はまだ結果こそ出ていないが、新人の高校卒選手としては'06年の銀仁朗(西武・捕手)以来5年ぶり(通算15人目)に開幕戦のスターティングメンバーに名をつらねて話題となった。
また、秋山翔吾(西武)の新人外野手開幕スタメン入りは西武球団としては'81年の岡村隆則以来30年ぶりの快挙とスポーツ紙が報じるなど、「今季の逸材は投手ばかり」という悪評を吹き飛ばした。
牧田、大石、福井――出色のタレントが揃う新人投手。
投手の活躍はさらに目立つ。15日には西武のサブマリン・牧田和久が昨年のパ・リーグ優勝チーム、ソフトバンクを8回途中まで2安打、1失点に抑える快投を見せれば、巨人の剛腕・澤村拓一は7回途中まで今季好調の広島を6安打、2失点に抑えるピッチングを演じ、“即戦力候補”の実力を満天下に示した。
2人が味方リリーフ陣の沈没で勝ち星がつかなかったのに対し、17日に先発した斎藤佑樹(日本ハム)と福井優也(広島)の早大1位コンビはみごと勝利投手に輝いた。斎藤は5回を投げ、6安打、4失点と打たれながらも“試合を作る”粘り強さを発揮、福井は充実した大学4年の勢いをプロにそのまま持ち越し、巨人の強力打線を封じ込めた。
まだ出場していない選手では、昨年のドラフトで6球団から1位指名された大石達也(早大→西武1位・投手)、開幕前に故障リタイアしなければローテーション入りが有力視されていた七條祐樹(伯和ビクトリーズ→ヤクルト2位・投手)などがいて、'11年の新人たちは近年では出色のタレント揃いと言って過言ではない。そんな彼らが注目されればされるほど、若手全般の負けん気に火がつくのも当然の流れである。