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新人の活躍が目立つ西武から
“新人王”が誕生しにくい理由とは?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byYukihito Taguchi
posted2011/04/24 08:01
開幕2戦目で猛打賞と活躍した西武ドラ3ルーキーの秋山翔吾。俊足と堅守は評価されていたが、開幕前から打撃の強化にも積極的に取り組み、きっちりと結果を出している
西武期待の大石、牧田、秋山の新人王獲得の可能性は?
今年のパ・リーグの新人王予想をするとき大石達也、牧田和久、秋山翔吾の新人トリオの名前がよく出てくる。伏兵としてしばしば名前が挙がってくるのが岩嵜翔(ソフトバンク4年目・投手)、浅村栄斗(西武3年目・内野手)、菊池雄星(西武2年目・投手)、伊藤光(オリックス4年目・捕手)たちで、4人は「支配下選手に初めて登録されてから5年以内で、前年までの出場が投手は30イニング以内、野手は60打席以内の選手」という新人王の資格を有している。この中から新人王が出現する可能性は無視できない。
ここまでの流れで気づくのは、西武に有力な新人王候補が多いことである。しかし、私は西武からは新人王が出現しない、とあえて断言したい。
'99年の松坂以来、西武からは新人王が出ていない。
西武の主力打線は中島裕之、中村剛也、栗山巧、片岡易之たち「ドラフト1位以外」の選手によって形成されている。ここで気づくのは、彼らが過去、新人王争いに絡んでいないことである。新人王の資格を残した状態でシーズンを終え、次シーズンに臨ませてやる、という親心がなかったためで、言い換えれば少しでも経験を積ませてやりたいという、別の配慮があった。これを能天気に「すごい、すごい」とはしゃいでは、西武の育成の真髄には迫れない。
過去10年間、松井稼頭央('04年→メッツ)、豊田清('06年→巨人)、森慎二('06年→デビルレイズ)、松坂大輔('07年→レッドソックス)、和田一浩('08年→中日)、細川亨('11年→ソフトバンク)と、主力選手の流出が続いている現実があるのだ。
若手を抜擢して、流出する選手の穴埋めをするという意識が西武フロント陣には強い。つまり、新人王の資格を残した状態でシーズンを終えさせる、という余裕が西武にはない。若手の一流選手が多いにもかかわらず、'99年の松坂以来、西武から新人王が出現していない原因の1つだろう。