野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
巨人ファンを襲った開幕騒動。
それでも揺るがぬ“ジャイアンツ愛”。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/04/03 08:00
3月23日(水)にホーム・スタジアムである東京ドームの最寄り駅・JR水道橋駅で募金活動をした巨人の選手会。参加メンバーは久保、澤村、東野、越智、内海、山口、阿部、小笠原、ラミレス、坂本、長野、亀井、鈴木、高橋由、松本の総勢15人だった
“できの悪い親”オーナーの傍若無人さにも慣れっこ。
開幕日もセ・パ同時開催で決定した週末。イースタン・リーグの楽天戦が行われていたジャイアンツ球場にも巨人ファンの姿はあった。
ユニフォームを着て応援に来ていたおとなしそうな男性は、問題が解消された安堵感からか、話を仕向けると不満を一気にまくしたてる。
「セ・パ同時開幕で落ち付いて本当によかった。東京ドームでナイターを強行すると決まっていたらこのユニフォームは間違いなく着れなかったでしょう。ナイターをやることだって汲むべき理はあると思うんです。だけど、日本が復興に向かって一体になろうとしている時に、巨人だけがあんな傲慢な言い方をしていたんじゃ、悪者になって当然。勘違いされやすい球団だから僕らファンだって他球団のファンと話をする時は言い方にも気を配っているのに、トップの人があんなモノの言い方をしたら感情的に反発するのは当たり前。正直、巨人ファンと名乗ることすら恥ずかしかったですよ。球場に来て、選手を観ていたらそんな気持ちも吹き飛びましたけどね」
それとは対極に巨人ファン歴30年の男性からはこんな冷静な意見も。
「オーナーがああいうことを言うのも慣れっこ、“できの悪い親”を持ったようなものだと諦めているけど、また夏場の電力不足が起きた時にナイターで問題は必ず起きるでしょ。その時の球団の対応で、僕がどういう気持ちになるかはわからない。日本もどうなってるかわかんないんだから」
問題が起きるたびに動揺してたら巨人ファンはやってられない?
ほとんどの意見が球団に批判的だったが、50代の男性の言葉は、巨人ファンの心得とも取れる印象的なものだった。
「賛否両論あると思うが、球界に意見を言えて、尚且つ世間からの非難を背負うことができるのは12球団で巨人しかいない。そういうチームだから選手もファンもいらぬ苦労があるのは間違いないが、これしきのことでファンを辞めると言っているようでは巨人ファンは務まらない」
男性の言葉には重みがあった。なぜなら江川事件にも長嶋解任にも、桑田騒動にも負けず。FA乱獲、ドラフト逆指名でのバッシングにも挫けず、原監督の読売グループ内の人事異動をもやり過ごし、オーナーが「たかが選手が」と言い放った2004年の球界再編問題でも頑としてジャイアンツ愛を貫き通した。
ハッキリ言って、筆者が巨人ファンだとしたら、これだけのものを前にしてもファンで居続けられる自信はない。途中で脱落した何人もの“元巨人ファン”のように、野球を観なくなっているか、「どこのファンでもないアンチ巨人」になっていただろう。