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<監督とチームメイトに聞く> 長友は世界一のサイドバックになれるのか?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2011/04/05 06:00
3月6日のジェノア戦でセリエA初ゴールを決めた長友は、キャプテンのサネッティと息のあった“お辞儀パフォーマンス”を披露した
イタリアサッカーにスムーズに溶け込んだ適応力。
長友の成功は、イタリアにおける日本人の評価を再び上げることになったと彼は言う。
「6月には日本に行く。何人かの選手を見るためにね。ナガトモのように内面もしっかりした選手を私は探しているんだ」
持って生まれたフィジカル能力を、巡り会った指揮官が上手く伸ばした。しかし驚くべきはその適応のスピードだろう。適応が難しいとされるイタリアサッカーにスムースに溶け込み、半年でトップクラブに評価されるまでになった理由とは何なのか。
「そんなの簡単だ。ナガトモは日本人なんかじゃない。あれはラテンの血が混ざってる。むしろイタリア人だよ」と、元チームメイトのMFジュゼッペ・コルッチは笑う。彼はこれまでにレッジーナで中村俊輔と、カターニャで森本貴幸と共にプレーしてきた。
「最初は大人しくてまじめな選手なんだろうなって思ってた。いわゆる一般的な日本人像ってやつだ。礼儀正しくて物静か。あまり輪の中に入ってこない、いつもクールな日本人。ナカムラは根っからに真面目だったな。初めて彼の声を聞いたのは半年くらい経ってからだ。モリモトもそこまで賑やかなタイプじゃない。ナカタもそうなんだろう? でもナガトモは違う。ロッカールームでふざけあってたし、冗談も言いあってた。最初は言葉も話せなかったのにね。今考えると、それは新たな環境への適応力だったんだと思う」
“世界最高の右サイドバック”マイコンはどう見ているのか?
そういえばインテルの輪への溶け込みも早かった。初得点を決めたジェノア戦、長友はサネッティと共に、サンシーロで堂々とお辞儀パフォーマンスを披露している。
高い身体能力と、異文化と集団の中にさらりと適応する力。その二つが、長友をわずか半年間で大きくステップアップさせたのだ。
3月14日、ミュンヘンではレオナルドの記者会見が行なわれていた。自身もかつてはサイドバックだった彼に尋ねてみる。
「ナガトモはチャンピオンズリーグという舞台で十分にやれる。彼はもうそのレベルにあるんだ。アジア杯でも日本を優勝に導いたし、それは簡単な事じゃない。インテルに来てからはまだ1カ月半だが、すでに様々な面で成長しているよ。攻守両面で多くを学んでいるし、メンタル面の成長も大きい」
現在世界最高の右サイドバックといわれるマイコンは、その姿を自分に重ねる。
「自分がモナコからインテルに移籍したのも、24歳の時だった。世界一の選手になりたいと昔から思ってたね。ブラジルでは誰しもがそう思うんだが。ナガトモがここにきて1カ月半、毎日練習で見ているが、彼は間違いなくそのレベルに到達できる。足が速いというのはそれだけで大きな武器なんだ。攻撃でも、守備でもそれはいかされるわけだ。そしてあの運動量。このまま成長していけば、このポジションで世界有数の選手になるよ」