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<監督とチームメイトに聞く> 長友は世界一のサイドバックになれるのか?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2011/04/05 06:00
3月6日のジェノア戦でセリエA初ゴールを決めた長友は、キャプテンのサネッティと息のあった“お辞儀パフォーマンス”を披露した
CLバイエルン戦後、囲み取材を終えた長友を直撃。
CLベスト8進出がかかったバイエルン戦、長友はベンチスタートだった。先発したのは長友より守備面で堅いとされるクリスティアン・キブ。しかし長友は後半終了間際にピッチに立つと、1分後には相手ペナルティエリアまで全速力で駆け抜け、結果的にこの攻撃がゴラン・パンデフの決勝点を呼び込み、インテルはベスト8へ進むことになった。
試合後、長友は東日本大震災の被災者へのメッセージを綴った日の丸を広げ、最後までピッチの上でかかげていた。
取り囲むメディアの取材を終え、チームバスに乗り込む前に聞いた。
長友佑都は世界最高のサイドバックになれるのか――。フィッカデンティはまだ伸ばすべき事があると言っていました。
「彼は僕の恩師です。彼がそう言うように、僕は全てにおいて伸ばさないと、世界一のサイドバックにはなれない」
――具体的にはどの部分を伸ばすべき?
「マイコンやサネッティから、日々学んでいますよ。ボールの持ち方。視野の広さ。ピッチ上での情報収集。そして判断の部分。特に攻撃面で彼らを常に見ていますね」
――これまでの欧州では、日本人がサイドバックでやれるという印象はあまりなかった。
「日本人はヨーロッパのサイドバックよりは体は小さいかもしれない。でも小さくても、アジリティがあれば全然やっていける。日本人にはこっちの選手に負けないスピードや運動量がある。それが僕のストロングポイントですしね。自分の長所を伸ばせば世界で戦える。それに加えて技術面も伸ばしていく」
マイコン、サネッティ、レオナルドらに囲まれた理想的な環境で。
日本人サイドバックの評価、こっちでも上がるといいですねというと、彼はきっぱりとこう言った。
「日本人の代表として、僕が引っ張っていく位の気持ちでやらないと、日本サッカー界も明るくなっていかない。そんな責任感を持ってやっていますね」
恩師が言うように、彼はまだ世界一のサイドバックではない。もしそうだとしたら、このバイエルン戦でも先発でプレーしていたことだろう。
しかしいま、長友は少しずつその場所へと近づいていっている。
かつて同じ場所を目指したマイコン、15年以上インテルでプレーし続けたサネッティ、そして指揮官レオナルドと過ごす日々。世界一を目指す上で、理想的ともいえる環境にいるではないか。
ブルーのジャージを着た選手たちがインテルのチームバスに乗り込んでいく。それに続く若きサイドバックは、今後どんな飛躍を見せてくれるだろうか。