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「飛ばない」「滑る」は言い逃れ?
統一球の導入で見抜かれる真の実力。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byKYODO

posted2011/03/11 10:30

「飛ばない」「滑る」は言い逃れ?統一球の導入で見抜かれる真の実力。<Number Web> photograph by KYODO

左が昨季まで使用されていた公式球。右が今季から統一して使用されることとなったミズノ社製の低反発球(とその断面)。見た目でも縫い目などがハッキリ違うのが分かる

スライダーやカーブを武器とする投手には有利か!?

 制球力に定評がある前田だが、初回の先頭打者を四球で歩かせるなど3四球で3失点。2回以降は立ち直ったものの、試合後、「フォームのバランスがうまくいかず、ボールも滑る感じがあった」とコメントを残している。

 この日の前田のように、ボールの滑りを意識するあまり腕に余計な力が入ってしまった結果、調子を乱してしまう投手が出てくることは十分に考えられる。

 だが一方で、プラスに働く面もある。

 今シーズン、左のエースとして飛躍が期待されている巨人の内海哲也は、統一球の感触についてこのように話してくれた。

「ボールが滑ると言われていますが、個人的には全く気になりませんね。ピッチャー全体ではスライダーが結構、曲がっていると感じますし、僕自身もかなり変化しますね。これは大きなプラスですよ。シーズンで大きな武器になってくれると思います」

 3月5日の日本ハムとのオープン戦で先発し、5回2失点の内容に内海は反省を口にしていたが、初登板としては上々の出来だといえる。どうやら、スライダーやカーブといった横の変化を主体とした投球をする投手には有利に働きそうだ。

打者の本質を問う、「飛ばす」ための力。

 打撃面に話を移すと、オープン戦序盤で最も統一球に苦しんでいるとみられるのは巨人打線だろう。昨シーズン、12球団最多の226本塁打を記録したチームが、5日現在で7試合戦い1本も一発が出ていないのだ。

 指揮官の原辰徳は、「決めつけることはできないが、想像の範疇」と静観している様子だが、事態が深刻であることに変わりはない。

 だからこそ、統一球ではいかに「自分の形でバットを振れるか」が求められる。

 '09年のWBCでチーム最多安打を放ったヤクルトの青木宣親は、大会前、公式球への対応についてこのように持論を述べていた。

「ボールの違いは気にせずに。むしろ、バランスが少しでも崩れたら室内で特打ちをするとか、自分のスイングでしっかりバットを振るほうを意識しています」

【次ページ】 「統一球を制する者はタイトルを制する」ということか。

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