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「飛ばない」「滑る」は言い逃れ?
統一球の導入で見抜かれる真の実力。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2011/03/11 10:30
左が昨季まで使用されていた公式球。右が今季から統一して使用されることとなったミズノ社製の低反発球(とその断面)。見た目でも縫い目などがハッキリ違うのが分かる
今シーズンから導入されているミズノ社製で統一されたプロ野球の公式球、いわゆる統一球は、「雑」に作られている。
とはいっても、世界最高水準のモノづくりの技術を誇る日本が手を抜くわけがない。野球における国際化を図るべくあえて雑な手法を施した、と表現したほうが正しいだろう。
品質を落とすという、「国際化」への道。
では、どこを雑にしたのか? 大きなところを挙げればボールの表面を覆う牛革だ。これまで使用されていた革は上質とされている背中部分のみだったが、それを脇や腹の一部まで広げた。そして、牛革やウール材などの生産も国内ではなく中国となった。そのことにより、昨年までのボールと比べると滑りやすくなったと言われている。
そのほかの変化では、縫い目の幅が7ミリから8ミリと1ミリ広くなり、高さは1.1ミリから0.9ミリと0.2ミリ低くなった。また、コルク芯を覆うゴム素材も新たな低反発素材を使用。一定の目標値から算出したところによると約1メートル飛距離が落ちるという、いわゆる「飛ばないボール」となった。
統一球の狙いは'09年のWBCに起因している。同大会の公式球に苦心する選手が多かった事実を踏まえ、似た仕様のボールを国内リーグに導入することで今後の国際大会に違和感なく臨んでほしい、というわけだ。
統一球に合わせた、選手それぞれの対策方法とは?
こうして迎えた「統一球元年」。選手たちはそれぞれ対策を練っている。
投手は分かりやすい。投げ込むことで指にボールをなじませ、滑りやすいのであればロージンバッグを多くつけるなどして対応する。
打者はもっと具体的だ。巨人のラミレスは、昨シーズンよりも10グラム重い930グラムのバットに代え、重量で飛距離を補おうとしている。横浜の村田修一は逆に、バットを軽くしスイングスピードの速さで遠くへ飛ばす打撃に努めている。
とはいっても、慣れないボールに戸惑う選手は少なくない。
投手では、3月2日のゲームで先発した広島の前田健太が苦しんだ。