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卓球の歴史が変わろうとしている!
中国独走を止めた日本の育成法とは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO/Jun Tsukida(AFLO SPORT)
posted2011/02/22 10:30
山口県出身で大阪の高校に通う17歳の石川佳純と、東京都出身で青森の高校に通う18歳の森薗美咲。2011年1月の全日本では石川がシングルで初優勝し、森薗はベスト8まで進んだ
多様な強化システムが“卓球王国”日本の土台を作る。
みなさんは、エリートアカデミーという名前を聞いたことがあるだろうか?
2008年に日本オリンピック委員会(JOC)と、日本卓球協会の強化育成プログラムとしてスタートし、東京・西が丘にある「味の素ナショナルトレーニングセンター」を拠点に強化を進めている。
対象となる選手は小学生の段階で選抜され、中学生の時点からエリート教育を受ける。現在は男子7人、女子4人が所属しており、石川佳純の妹、梨良(りら)もエリートアカデミーの選手だ。
実は、今回の団体優勝のメンバー3人は、現状の女子卓球界の強化体制を端的に表しているのが興味深い。
石川は大阪・四天王寺高校に在学し、ミキハウスJSCにも所属している。森薗は小学校までは両親が経営する東京にある美鷹クラブでプレーし、中学進学と同時に親元を離れ、青森山田中学に進み、そのまま高校へと進学して成長してきた。
そして谷岡がJOC肝いりのエリートアカデミー。
現状では「四天王寺」、「青森山田」、「エリートアカデミー」の3本の柱が日本卓球界の国際競争力を高める結果となっている。
一点集中主義のエリート養成システムでは中国を倒せない?
個人的には、どこか1カ所の学校、クラブが突出しているよりも、国内での競争が激しくなった結果、国際的な力がアップしていく方が好ましいと思う。
日本の卓球界は福原愛の幼少時からのトレーニングの影響もあり、早期から卓球に取り組む親子が増え、小学生レベルから頭角を現す選手が多くなった。今年の全日本選手権では10歳の平野美宇がシングルス2回戦を突破したのが好例だ。
小学生のうちに才能を示した選手には、複数の強化ルートが用意されているわけだ。
中国には「町」から「市」、そして「省」から「国家」へとつながる強化システムがある。幼少時からの徹底した選抜主義が中国を支えてきたが(国家チームのコーチになるにも選考会がある)、日本の体制も中国ほど盤石ではないにせよ、匹敵するシステムを構築しつつある。
卓球の歴史が、変わりつつあるのかもしれない。
世界選手権の女子シングルスの優勝者を見てみると、1979年から2009年にいたるまで、1993年に韓国選手が優勝した以外は、すべて中国の女子選手が制している。女子団体に関しては1975年以来、1991年と2010年を除きずっと中国の天下だった。
ジュニアの次はシニア。これからの日本対中国の戦いは強化システムの戦いでもある。