カメラマンが語る:スポーツ写真の魅力とはBACK NUMBER
その試合でしか撮れない一枚を狙っている。
text by
福本悠Yu Fukumoto
photograph byNaoyoshi Sueishi
posted2011/02/17 12:00
ひとつの大会が彼にスポーツ写真の魅力を教えてくれたという。
1999年、パラグアイで開催されたコパアメリカ。ゲストとして日本代表が招待されたこの大会で、撮影をしていたスエイシナオヨシは、初めてサッカーの面白さに気づかされたという。
「日本でJリーグの試合は撮影していたんです。でも、コパアメリカで見たサッカーはまったく別物でした。特に準々決勝のブラジル対アルゼンチン戦で感じたサポーターの盛り上がりは、それまでに体験したことのないものでした」
当時、悲願のワールドカップ初出場を果たしたばかりの日本では、まだ世界のサッカーを目にする機会も少なかった。観客でぎっしりと埋めつくされたスタジアム、初めて目にするハイレベルなプレー。ポートレートを中心に活動していたスエイシは、これ以降スポーツ撮影にも本格的に取り組むことになる。
絶対にテレビでは伝わらない一瞬を、カメラで切り取る
ポートレートとスポーツ撮影の違いをスエイシは“農業”と“狩り”と表現する。
「ポートレートはライティングやポーズなどある程度、自分のイメージ通りに撮れる。言ってみれば、育てることができるんです。でも、スポーツ撮影は自分が思い描いていた絵を必ず撮れるとは限らない。自分で狩りにいかないといけない。そこが面白いですね」
サッカーを撮影するときに狙うのは、テレビでは伝わらない一瞬だ。
「シャッターを切るときは、自分が格好いいと思う写真を撮りたいといつも思っています。そのひとつが“浮遊感”です。ジャンプをしたりドリブルをしている瞬間、選手が宙に浮いている写真はいつも狙っていますね」
そして、その試合でなければ、撮れなかった瞬間を捉えること。
「2004年アジアカップの日本対ヨルダン戦で、PKを止めてガッツポーズをする川口能活選手を撮った一枚があるんですけど、この写真みたいに、見た人が試合内容まで思いだすような“試合を象徴する一枚”を撮っていきたいですね」