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斎藤佑樹はゴロでアウトを稼ぐべし!
マダックスに見る技巧派投手の戦略。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byMiki Fukano
posted2011/02/10 10:30
連日の厳しい練習に汗を流す斎藤佑樹。宿舎での夜の過ごし方をメディアに尋ねられると「パソコンや音楽を聴いたり。ゲームを持ってきているので……引き籠りですよ」と殊勝な言葉を返した
驚異的な制球力が実現させた、打たせて取る投球術。
彼の全盛期にあったと思われる1994年、マダックスは202回を投げ、喫した本塁打はわずか4本しかなく、被本塁打率は0.18。このシーズンの防御率は1.56である。
このシーズンのK/9は6.95、彼自身の生涯平均よりは高いが、三振で投球を組み立ててはいない。
三振は取らなくても、成功出来ることをマダックスは証明している。
マダックスが持っていた球種で効果的だったのは、ツーシームとチェンジアップだった。
ツーシームは日本でも定着してきたが、シュート回転で沈んでいくボールだ。このキレでバットの芯をズラしていたのである。そしてチェンジアップでタイミングをずらす。
つまりマダックスは空間的なズレと、時間的なズレを有効に使いこなしていたのである。もちろんそのためには抜群のコントロールがあったことは言うまでもない。
斎藤佑樹の真価は「GB率、ゴロの割合」で浮き彫りになる。
前回、「早大三羽烏」として斎藤、大石、福井のデータを調べたのだが、プロでいちばん苦戦しそうなのが斎藤だった。彼が成功するために参考になるモデルはないか……とたどりついたのがK/9の少ないマダックスだった。
私は斎藤のキャンプの課題として、球速のアップに挑むのではないか、と前回のコラムで書いたが、より正確を期すならば「変化球を生かすためのストレートの球速アップ」とすべきなのだろう。
大石、福井と比べてもはるかにK/9、奪三振率の低い斎藤は打たせて取る方法に活路を見出すしかない。そうなるとまだ気は早いが、オープン戦でのチェックポイントは次のようになる。
・GB率、ゴロの割合
これにつきる。メジャーに限らず、日本のプロ野球でもフライの比率が上がると、それにともなって本塁打の数も増えていく。斎藤の場合、オープン戦の段階である程度、ゴロでアウトを取れるかどうかで先発ローテーションに入れるかどうか、占うことが出来るだろう。