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斎藤佑樹はゴロでアウトを稼ぐべし!
マダックスに見る技巧派投手の戦略。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byMiki Fukano
posted2011/02/10 10:30
連日の厳しい練習に汗を流す斎藤佑樹。宿舎での夜の過ごし方をメディアに尋ねられると「パソコンや音楽を聴いたり。ゲームを持ってきているので……引き籠りですよ」と殊勝な言葉を返した
2月24日発売のNumber773号の取材で、野村克也前楽天監督に取材をしてきた。会って話を聞くたびに、いつも野球の勉強をさせてもらっているが、今回もたっぷり教えていただいた感じ。
いま、野球と言えば斎藤佑樹なので、監督(つい、そう呼んでしまうのだ)にも、斎藤の現時点での評価を聞いたが、
「技巧派だよね……。真っ直ぐで三振を取るタイプじゃない。そうなると相手打者のことを知らなくちゃいけないから、覚えることが多くて大変でしょう」
と話していた。
技巧派として斎藤がプロの世界で成功するかどうか、これから見極めていかなければならないが、大学時代の斎藤の投球からどんな傾向が読み取れるか、メジャーリーグのデータを参考に考えてみたいと思う。
例として引き合いに出すのは、私が投球を生で観戦した中で最高の技巧派投手、グレッグ・マダックスである。
三振よりもゴロでアウトを稼いだマダックスの投球術。
私はマダックスの試合を見るのが何より楽しみだった。ロジャー・クレメンスが投げる時よりも、得した気分になったものだ。
見ていてテンポがいい。記者室のモニターで見ていると、打者の手元でボールがものすごく動いているのが分かる。そして何より野球を簡単にプレーしているように見えた。
マダックスは1986年にカブスでメジャーデビューし、2008年に引退するが、通算355勝、42歳の最後のシーズンも先発として194イニングを投げた「怪物」である。体は決して大きくはないが、タフだったのである。
これだけの勝ち星を挙げた投手として、特徴的なのは「三振が少ないこと」だ。
K/9 (奪三振率) |
BB/9 (与四死球率) |
HR/9 (被本塁打率) |
GB% (ゴロ比率) |
|
---|---|---|---|---|
マダックス | 6.06 | 1.80 | 0.63 | 51.5 |
スモルツ | 7.99 | 2.62 | 0.75 | 45.9 |
9回あたりの奪三振数の割合を示す「K/9」では、6.06。ブレーブス時代の同僚で本格派のジョン・スモルツと比較してみると、約2個少ない。
ではどんな武器で打者を打ち取っていたかというと、次の2点に凝縮されると見る。
・GB率、すなわち相手にゴロを打たせる確率が高い
・被本塁打率が低い
マダックスの場合、打者がボールに当てたとしてもほとんどがゴロになってしまう。それだけボールが揺れ、バットの真芯でボールを捉えさせないことが重要なのだ。これを徹底しているとフライが減り、結果的に本塁打を打たれるリスクが低減する。