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育成ドラフト6位→ホークス、五輪とWBCで栄冠→巨人FAの甲斐拓也「じつは狙える史上初捕手の偉業」とは…打撃もOPS1.384、キャベッジと大暴れ
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/01 17:00

巨人に移籍した甲斐拓也。育成ドラフト6位から球界屈指の捕手へと駆け上がった
巨人は2017年に岸田、大城ら4人の捕手をドラフト、育成ドラフトで獲得するなど、捕手コレクションを頻繁にする球団なのだ。キャリア後半に差し掛かった甲斐にとって、捕手ひしめく球団への移籍は冒険であって、わざわざ挑むべき目標とも思えなかった。
しかし甲斐は昨年12月26日、巨人入団を発表。記者会見で入団を表明した。
ポイントは捕手出身の阿部慎之助監督だった。
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「来て欲しいよね。絶対的な司令塔が欲しいから。絶対的な司令塔がいればチームにとっても、とてつもない安心感がある。そういう支柱が欲しい」
と熱烈にアプローチし、自身がつけた背番号「10」を譲ったのだった。
赤星と石川の好投を導き、3試合のOPSは1.384
懸念は、実力がある捕手が揃っているために、出場試合数を複数捕手で小間切れにシェアするような事態だ。巨人は過去にFA選手をそういう起用をして、十分に力を発揮させなかったことがままあった。
そうなれば、甲斐のためにもならないのではと思ったのだが、阿部監督は開幕から3試合、甲斐にマスクを託し続けた。岸田が1試合だけ途中からマスクを被ったものの、ほぼ甲斐が正捕手だった。これでこそ、甲斐拓也の本領発揮となる。
特筆すべきは2、3戦目。グリフィンの発熱に伴って緊急先発した赤星優志、DeNAを戦力外になり巨人に入団して開幕ローテをつかんだ石川達也という、経験値の低い先発投手を、ともに5回無失点と好投させた手腕だ。若い投手にとって、侍ジャパンの正捕手、甲斐は絶対的な安心感があるのだろう。
そして打撃が驚異的だ。3試合で13打数7安打1本塁打2打点、打率.538は首位打者。OPSは1.384。甲斐は下位打線で痛打を放つタイプの選手で、思い出したように打つホームランが試合を決することもあった。このまま打撃開眼となるとは考えにくいとはいえ、じつは両リーグでベストナイン、ゴールデン・グラブを獲得すれば、捕手としては史上初となる。
新しい境地に挑む甲斐拓也に、期待したい。
一方で…ホークスは甲斐の抜けた穴をどうするのか
【第1週】 ※2025年3月28日から30日まで
〈チーム順位〉
□セ・リーグ
巨人3試3勝0敗0分率1.000
阪神3試2勝1敗0分率.667
DeNA3試2勝1敗0分率.667
広島3試1勝2敗0分率.333
中日3試1勝2敗0分率.333
ヤクルト3試0勝3敗0分率.000
□パ・リーグ
日本ハム3試3勝0敗0分率1.000
ロッテ3試3勝0敗0分率1.000
オリックス3試2勝1敗0分率.667
楽天3試1勝2敗0分率.333
ソフトバンク3試0勝3敗0分率.000
西武3試0勝3敗0分率.000
昨年の開幕シリーズでは中日が2敗1分だったが、3連敗は両リーグで1球団もなかった。しかし今年は両リーグで3球団。チームの好不調がくっきり分かれた。とくにパ最強の前評判が高かったソフトバンクの3連敗は驚きだ。先発捕手は1試合目が谷川原、2、3試合目が海野だった。前述の甲斐が抜けた穴は大きいというのは時期尚早だが、今後、どう盛り返すか。