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「早朝5時から朝練、キャンパス往復3時間…」“私大最難関”早稲田大政経学部ランナーが箱根駅伝を3回走るまで…「授業の合い間も走っていました」
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2025/04/04 11:07

伊福陽太。早稲田大学政治経済学部で4年間学び、じつに3度箱根駅伝を走った
「片道1時間半かかりました。寮を出て、自転車ないしバスで最寄りの小手指駅まで行って、小手指から高田馬場まで行きます。ただ、自転車で事故に巻き込まれるのも怖いので、バスを使うことが多かったです。そして高田馬場から本キャンまでは歩いて20分。みんな、『馬場歩き』って呼んでます(注・私が在学した1980年代から、その呼び方は変わっていない)。帰りも、4限がある日は寮に着くのが6時から7時ぐらいで、それから食事というスケジュールです。行きはだいたい寝てましたけど、帰りの電車の中では課題をこなして、時間を有効に使おうとはしてました」
私が担当する授業でも、必ず課題があった。授業の感想を書く「リアクション・ペーパー」は出席の代わりとなる。提出を忘れてしまい、欠席扱いになってしまう学生もいるなか、伊福君は必ず提出していた。移動時間を有効利用していたのかもしれない。
「キツいポイント練習の水曜日は空けておく」
「政治経済学部と競走部を両立させるのは、苦労もありました。レポートの文字数の指定が多い科目もありますし、試験期間も長かったです。僕は政治学科でしたが、1、2年生の時は必修科目に数学の要素が含まれていたり、なかなか大変でした」
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両立は時間のやりくりが勝負だ。チームスポーツとは違い、陸上競技は個人の裁量で練習する時間帯も多いので時間の工夫はしやすいが、ポイント練習の曜日を考慮しつつ、「科目登録」を考えた。
「授業の情報が網羅されている『マイルストーン』という雑誌があって、それを見て、出席重視で比較的単位の取りやすい科目から埋めていったりしました。ただ、卒業に必要な124単位を取るとなると、いわゆる“楽単”ばかり取っていては難しいんですよ。やっぱりどこかで攻める科目を取らなければいけない。そうした科目は、頑張りました」
競走部では、水曜日にポイント練習が入ることが多く、その日は練習にリソースを割きたかった。
「必修が入っていない限り、水曜は出来るだけ空けておきたかったです。競走部の練習は月曜がオフなので、僕は、月曜は早稲田まで行かずに休みに充てるプランでした。とはいっても、軽くは走るんですけどね。そして火曜、木曜、金曜に取れる授業を1限、2限から入れて、4限ないし、5限まで入れて、詰め込む。そんな大学生活でした」
「2年生、いきなり箱根ランナーに…」
問題は、空き時間だ。サークルの学生はラウンジで友人たちと話をして時間を潰したりするが、伊福君はトレーニングに充てた。