甲子園の風BACK NUMBER
「“早打ち嫌い”は皆無」「2ストライクから継投いくぞ」横浜20連勝でセンバツ優勝+秋春連覇…自信の背景に根拠あり「飛んだ瞬間に捕れる」
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間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/03/31 17:02

19年ぶりのセンバツ優勝を果たした横浜高校。表彰式の阿部葉太主将らは「勝って兜の緒を締めよ」がしっくりくる表情だった
「2ストライクで走者もいたので最低限、走者1人を還す意識で食らいつきました。内角を2球ファウルにして、外角に来るかなと思っていました。ボール球でしたが対応できました」
相手のミスを得点につなげる一打。しかも、昨秋の大会では打率.053(19打数1安打)、13三振と打撃が得意ではない織田の出塁を無駄にしなかった攻撃は相手に大きなダメージを与えた。
派手さはなくても駆け引きに勝利した場面とは
この直前にも、派手さはないがプレーの中で駆け引きに勝利した重要な局面もあった。
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織田の安打と、続く打者の犠打に相手の失策も重なって無死一、二塁。為永が打席に入る。智弁和歌山の中谷仁監督がベンチから守備陣にサインを送る。次いで、横浜の村田浩明監督が為永にサインを出す。すると、何としても進塁を防ぎたい中谷監督はサインを出し直した。
智弁和歌山の投手がセットポジションに入ると、サードとショートが前にダッシュ。セカンドベースが空いたと認識した二塁走者がリードを大きく取ったタイミングでセカンドが二塁ベースに入り、投手がけん制球を投げるサインプレーだった。横浜の二塁走者・織田は帰塁して事なきを得たが、打席の為永は智弁和歌山の作戦が気になって冷静さを失ってもおかしくない場面。それでも、難なく犠打を決めて走者を進めた。
「焦りや戸惑いはなかったです。相手監督がサインを出しているのは分かっていましたが特に気にせず、バントを決めて走者を進める自分のやるべきことに集中しました」
「飛んだ瞬間に捕れる」「2ストライクでいくぞ」
甲子園という大舞台であっても冷静さを保ち、大事な場面で普段通りのプレーができるのは守備も同じだった。6回の攻防で、この試合は決まった。6回表、横浜は2死三塁のピンチを招く。智弁和歌山の5番・荒井優聖選手の打球はライナーでセンターを襲う。タイムリーと確信した智弁和歌山ベンチやスタンドが沸く中、横浜のセンター阿部が飛びついてグラブに打球を収めた。
打球がセンター前に落ちれば、点差は1点に縮まる。打球を後ろに逸らせば同点のランニング本塁打となるリスクもあった。だが、阿部に一切の迷いはなかった。
「打球が飛んだ瞬間に捕れると思いました。常に様々な打球を想定して、その打球に対する動きを決めています。決断して動くだけでした。ファインプレーはすごくチームに流れを引き寄せますし、あの場面で1点取られてしまったら、完全に流れが相手に動いてしまうのは分かっていました」
このアウトを取る1つ前の場面では、村田監督が勝負の一手を打っていた。