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名人・藤井聡太が解説で「佐藤九段が軽快に攻めましたが」挑戦権は佐藤天彦vs永瀬拓矢のプレーオフ…「将棋界の一番長い日」A級順位戦はどうなった?
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byNanae Suzuki
posted2025/03/02 06:00

今期も熱戦となったA級順位戦。名人・藤井聡太への挑戦権は佐藤天彦と永瀬拓矢のプレーオフによって決まる
佐藤-佐々木戦:佐藤の三間飛車に対して佐々木が4筋から開戦。
永瀬-増田戦:矢倉模様から永瀬が6筋に桂を跳ねて開戦。
豊島-千田戦:角換わりから豊島が早繰り銀の作戦。
渡辺-菅井戦:菅井の三間飛車穴熊に対して渡辺は居飛車穴熊。
稲葉-中村戦:稲葉の雁木に対して中村は腰掛け銀の作戦。
佐藤-佐々木戦と永瀬-増田戦は、開始からまもなく戦いが起きた。昼食休憩以降はどちらの対局も長考が続き、落ち着いた展開に進んだ。渡辺-菅井戦は、堅陣の穴熊にともに玉を囲って長期戦が想定された。しかし、菅井が角を切って飛車を活用すると、渡辺も飛車を敵陣に侵入して激しい攻め合いとなった。
藤井名人は当日の15時過ぎに現地の大盤解説会に登場した。佐藤-佐々木戦については、「佐藤九段が軽快に攻めていきましたが、佐々木八段が駒得を生かしてしっかり受け止めています」と戦況を解説した。
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18時に夕食休憩に入った。大半の棋士は「うな重」か「寿司」だったが、佐々木は「うな重」「マグロ丼」「ビフテキ」を注文した。昨年の竜王戦七番勝負で見せたように旺盛な食欲だった。
今期が最終決着したのは23時49分のことだった
【18時59分 渡辺-菅井】
渡辺は夕休明けに寄せにいった。菅井の穴熊玉を即詰みに討ち取り、99手で勝った。渡辺は足の負傷によって2敗したが、最後に2勝して5勝4敗で終えた。菅井は体調不良のために前夜祭を欠席した。その影響か本局でも精彩を欠いた。3勝6敗となり、5期在籍したA級からの降級が決定した。
【19時30分 豊島-千田】
菅井が負けたことで、豊島と千田は降級を免れた。対局中は両者に伝えられず、残留を目指した必死の戦いが終局までこのあとさらに4時間も繰り広げられた。
【20時5分 永瀬-増田】
中盤で両者の細かい攻防手順が続いた。増田は局面打開に動いたが、結果的に芳しくなかったようだ。
【21時2分 佐藤-佐々木】
佐藤は居飛車党だったが、2年前から振り飛車を用いて好成績を収めている。今期A級順位戦では9局のうち8局が振り飛車。本局は駒損が響いて少しずつ苦しかった。佐々木は中盤で飛車が敵陣に侵入して優勢になった。
【22時9分 永瀬-増田】
永瀬は難しい局面を乗り切り、確実に寄せて76手で勝った。永瀬は6勝3敗となり、プレーオフ進出の可否を待った。増田は「勝負にならなかった」と語ったが、A級1期目を5勝4敗で終えた。
【23時8分 佐藤-佐々木】
佐々木は佐藤の攻めをしっかり受け止めると、最後は後手玉を即詰みに討ち取り、127手で勝った。佐藤は敗れて6勝3敗となり、永瀬とプレ-オフで対戦する。「気持ちを切り替えて臨みたい」と語った。佐々木はA級2期目を5勝4敗で終えた。
【23時35分 豊島-千田】
豊島は終盤で千田の入玉を阻む銀捨ての妙手を放ち、千田の猛攻を振り払って140手で勝った。豊島と千田はともに4勝5敗で終えた。
【23時49分 稲葉-中村】
激闘の末に稲葉が144手で勝った。中村はA級2期目を4勝5敗で終えた。稲葉は3勝6敗となり、来期はB級1組で戦う。
4日には佐藤-永瀬のプレーオフが
藤井名人への挑戦権を目指す佐藤九段と永瀬九段のプレーオフは3月4日に行われる。
両者の対戦成績は永瀬の9勝、佐藤の6勝。12局目まではすべて相居飛車だったが、直近3局は佐藤が振り飛車を用いた。今期A級順位戦では昨年6月の第1戦で対戦。佐藤の角交換振り飛車の戦型から、佐藤が終盤の寄せ合いを制して勝った。
「将棋界の一番長い日」の延長戦は、佐藤が名人戦に6年ぶりに登場するか、永瀬が名人戦に初挑戦するか、ということで改めて注目される。
