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名人・藤井聡太が解説で「佐藤九段が軽快に攻めましたが」挑戦権は佐藤天彦vs永瀬拓矢のプレーオフ…「将棋界の一番長い日」A級順位戦はどうなった?
posted2025/03/02 06:00

今期も熱戦となったA級順位戦。名人・藤井聡太への挑戦権は佐藤天彦と永瀬拓矢のプレーオフによって決まる
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Nanae Suzuki
2024年度のA級順位戦は2月27日に最終戦を迎え、静岡県静岡市「浮月楼」で行われた。「将棋界の一番長い日」と呼ばれる最終戦では、藤井聡太名人(22=竜王・王位・王座・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)への挑戦者争いとともに、一流棋士の証しであるA級の地位を保つ残留争いも注目された。時系列で追うA級最終戦の勝負、過去の旧将棋会館での大盤解説会のエピソードについて田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】
「名人戦第0局」とも称される浮月楼の戦い
2025年2月27日。A級順位戦の最終戦全5局が静岡県静岡市「浮月楼」で一斉に行われた。庭園の池に浮かぶ月の美しさが名称の由来という料亭は落ち着いた佇まいがあり、2018年から8年連続で対局場になっており、「将棋名人戦第0局」とも形容されている。なお江戸幕府の15代将軍・徳川慶喜は、大政奉還後の明治2年から20年にわたって「浮月楼」に住んでいたという。
A級順位戦の最終戦を迎えた時点で、各棋士の成績は次のとおり(カッコ内は年齢とA級順位)。
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【6勝2敗】佐藤天彦九段(37/6位)
【5勝3敗】永瀬拓矢九段(32/2位) 増田康宏八段(27/10位)
【4勝4敗】渡辺明九段(40/3位) 佐々木勇気八段(30/7位) 中村太地八段(36/8位)、千田翔太八段(30/9位)
【3勝5敗】豊島将之九段(34/1位)、菅井竜也八段(32/4位)
【2勝6敗】稲葉陽八段(36/5位)
最終戦のカードは次の5局。持ち時間は各6時間。▲は先手番。対局前の状況について、以下簡潔に触れておこう。
《佐藤九段-▲佐々木八段》
佐藤は勝てば名人戦の挑戦者に決定する。
《永瀬九段-▲増田八段》
佐藤が負けた場合、本局の勝者と佐藤でプレーオフが行われる。
《豊島九段-▲千田八段》
24年の名人戦で挑戦者になった豊島は、千田に敗れて菅井が勝つとB級1組に降級する。千田も負けると降級の可能性がある。
《▲渡辺九段-菅井八段》
菅井は負けるとB級1組に降級する。
《稲葉八段-▲中村八段》
稲葉はB級1組への降級がすでに決定している。稲葉-中村戦以外の対局は、どちらかの棋士が挑戦や降級に関わっていた。
“異例の椅子対局”渡辺と、最終戦の不文律とは
今期A級順位戦では、前代未聞のことが起きた。