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「常人じゃ藤井聡太さんに勝てません。きついですよー」永瀬拓矢が“評価値的に逆転負け”直後…電話口で本音「自分がいいと。形勢を誤った理由です」

posted2025/02/11 06:01

 
「常人じゃ藤井聡太さんに勝てません。きついですよー」永瀬拓矢が“評価値的に逆転負け”直後…電話口で本音「自分がいいと。形勢を誤った理由です」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

王将戦第3局、藤井聡太七冠の前で天を見上げる永瀬拓矢九段

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph by

Keiji Ishikawa

王将戦で藤井聡太七冠(22歳)に挑んでいる永瀬拓矢九段(32歳)が第3局を終えた2月6日の夜、旧知の記者に電話口で再び語った「80分間の本音」。〈NumberWebノンフィクション/全4回の2回目。棋士の肩書は省略〉

もしもし…対策がない将棋になってしまいましたね

 王将戦第3局を戦い終えた永瀬からのメールには、連絡への感謝と、午後10時から(電話取材を)どうでしょうか、という趣旨の文面があった。

 やった! 喜びと安堵の感情が湧き上がったが、いつまでも浸ってはいられない。すぐにお礼と確認の返信をして、気持ちを切り替えた。何を尋ねようか。質問の内容をスマホにメモする。聞きたいことは山ほどあって、入力する指のスピードが追いつかない。永瀬に取材する時はいつもそうだ。

 午後10時ジャストに電話をかけた。すぐに応答があり、「もしもし」という受話器越しの声に懐かしさを覚えた。先ほど対局室で生の声を聞いたばかりだが、スマホを通じては昨年9月の王座戦第2局以来だった。

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 まずは王将戦第3局の内容についてである。取材が始まったばかりでお互いに緊張感がある段階では、将棋の話をするのが一番いい。永瀬はよく話すタイプだと思うが、寡黙な棋士でも指し手に関することならいくらでも話をしてくれる。会話のアイドリングには適しているのだ。

 本局は先手の永瀬が角換わりに誘導した。事前研究が大事になることが多い戦型だが、どこまで想定していたのだろうか。

「△8六歩(54手目)の局面は過去に指したことがあったんですけど、結構前の将棋だったのでどういう進行か覚えていませんでした。2年から1年くらい前だったと思うんですけど……。経験はあるけど、対策がない将棋になってしまいましたね」

 終局直後、「(藤井の)封じ手は自分が考えた選択肢に入っていなかった」とコメントをしていたが、評価値を見る限りは永瀬がずっとうまくやっていたように映る。自身の手応えはどうだったのか。

「封じ手は△4七歩成か△9五歩だと思っていて、その2つを考えていました。本譜の飛車引きは形を整える手なので、藤井さんは悲観されているんじゃないかと思いました。その後は順調に進んでいる気がしましたね。飛車と角交換をした後、6五に歩を打った局面(93手目)は指せている気がしていましたし」

両対局者が…指せなくても反省する点は特にない

 いよいよ急所の質問だ。

【次ページ】 藤井さんも大丈夫だと判断して踏み込んだわけですし

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