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藤井聡太の賞金1億7556万円だが…棋士トップ10の総額4億円は“30年前より減っている問題”「プロ野球などは観客数万人、大盤解説会は多くて…」
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byNanae Suzuki
posted2025/02/23 06:01

藤井聡太七冠の賞金が華やかに伝えられる一方で、将棋界全体の公式戦年間賞金という面では頭打ちの現実がある
同年の女流棋士1位は西山朋佳女流三冠で、例年と同じく金額は非公表。なお96年ランキングでは、清水市代女流四冠が女流棋士として1000万円を初めて超えた。
1989年の獲得賞金・対局料ランキングのベスト10の総額は約3億円。その後、96年ランキングのベスト10の総額は約4億3000万円に増えた。各タイトル戦の契約金が堅調に伸びていたからだ。しかし97年以降の契約金は、全体的に据え置きや減額が続く状況となってきた。実際に2024年ランキングのベスト10の総額は約4億円で、約30年前より減っている。
将棋連盟の主要財源は、新聞社などとの棋戦契約金である。しかし、発行部数や広告収入の減少、ネット時代への移行による活字離れによって、新聞社の財政は厳しいのが現実だ。
八冠独占しても獲得額2億円に満たない現実
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近年は「〇〇杯」といった企業の特別協賛によるタイトル戦が多い。ただ棋戦主催者の負担を軽減する形態のようで、契約金の大幅アップには至っていない。その一方で、動画配信サービス「ABEMA(アベマ)」がタイトル戦などの対局中継を常時していて、年間の契約金はタイトル戦並みだという。
藤井は棋士4年目の2020年に棋聖と王位のタイトルを初めて獲得し、賞金・対局料は4000万円を超えた。以後もタイトル獲得を重ねて増額していき、全冠制覇の「八冠」を達成した23年は最高額の1億8634万円だった。ほかにイベント出演料、広告契約料、印税などの副収入を合わせれば、2億円以上と推定される。
一般の人から見れば、20代前半でそれだけの収入があるのはすごいと思うだろう。しかし、すべてのタイトルを取ったトップ棋士の獲得額が2億円に至らないことは、将棋界の現状を如実に示している。
イベント、大盤解説会は盛況だが観客は多くても…
野球、サッカー、テニス、バスケットなど、世界のプロスポーツでは、トップ選手が年間で10億円以上を獲得する例は珍しくない。ドジャースと10年間で日本円にして約1015億円もの超高額契約を結んだ大谷翔平は別格であるが――日本のプロ野球界でも、藤井と同じぐらいの年俸の選手は多くいる。それには構造的な違いがあった。
前記のプロスポーツは、テレビ局やインターネット番組からの放送権料、世界的な企業からの宣伝広告費、何万人もの観客の入場料、関連商品のロイヤリティーなど、巨額の収入を得るビジネスモデルで成り立っている。運営会社がチームの赤字を補填することもある。