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藤井聡太の賞金1億7556万円だが…棋士トップ10の総額4億円は“30年前より減っている問題”「プロ野球などは観客数万人、大盤解説会は多くて…」
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byNanae Suzuki
posted2025/02/23 06:01
藤井聡太七冠の賞金が華やかに伝えられる一方で、将棋界全体の公式戦年間賞金という面では頭打ちの現実がある
近年の将棋界は「藤井人気」の好影響によって、各種イベントや大盤解説会は盛況だが、観客は多くて数百人というレベルだ。プロスポーツのように、広い会場に数千人、数万人という集客がないと、本物の人気とは言えない。
新聞社などとの棋戦契約金が頭打ちになっている現状では、大企業から高額の協賛を得ることが望まれる。ただ特別な付加価値がないと難しいようだ。
その一例として国際化がある。
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日本の伝統的な格闘技の柔道は世界的に普及していて、各国の選手の実力は高くて愛好者はかなり多い。今では「JUDO」で通っている。将棋も「SHOGI」として世界的に広まればいいが、現状は国内にとどまっている。
ちなみに…著者の田丸九段の年間最高額は?
プロスポーツの選手はたいがい30代で引退し、現役年数は決して長くない。棋士の場合、公式戦の成績がよほど悪くなければ、原則として60歳ぐらいまで現役を続けられる。
田丸は現役時代に目立った実績を挙げられなかったが、2016年に66歳で引退するまで、45年間も「細く長く」現役を続けられた。ちなみに公式戦の対局で得た年間の最高額は、順位戦でトップのA級に昇級した1992年ランキングの1323万円(20位)だった。その後、順位戦でB級からC級と降級すると、獲得額も比例して減額していった。
一般の勤め人は、勤務年数を重ねるうちに給料も増えていく。棋士の多くは加齢によって実力がたいがい下降していき、収入も減っていく。しかし好きで入った世界なので、どの棋士もそんな現実に納得しているのだが――。

