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「あんたら、ここで終わるつもりなの?」J2復帰カターレ富山のこれから…“69歳の熱血社長”左伴繁雄は言った「この人たちを残して離れるわけにはいかない」
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph byTetsuichi Utsunomiya
posted2025/01/27 17:02
カターレ富山が11年ぶりのJ2昇格を決めた2024年12月7日、富山県総合運動公園陸上競技場でメガホンを握る左伴繁雄社長
「僕が湘南にいた2014年、J2時代の富山と対戦しているんですよ。その時の印象が『ウザいチーム』(笑)。そんなに上手くないんだけど、泥臭くボールにまとわりついてくる。こっちに来てから、それが“富山スタイル”なんだって理解しました」
その富山スタイルを具現化するのが、2022年9月にヘッドコーチから監督に昇格した小田切道治である。富山第一高校出身で、現役時代の晩年を富山で過ごし、指導者に転じてからも富山一筋。昇格を2回逃しても、左伴が小田切を見限ることはなかった。
「なぜかというと、富山の3原則を現役時代から体感していたのが彼だったから。それを今いる選手に植え付けるという意味で、小田切以上の適任者はいません。歴代の監督を振り返ると、技術系だったり、戦術系だったり、球際系だったり、ぜんぜん違うタイプを連れてきていたでしょ。やはりフロントの判断に、問題があったと思いますね」
岡田武史との再会「完全に勝負に徹しているな…」
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クラブ経営者が現場にコンセプトを求めることについて、左伴は「マリノス時代に岡田(武史)さんと一緒に仕事をした3年間が大きかった」と語る。その岡田がオーナーを務めるFC今治が、2024年の自動昇格を争うライバルとなった。
この年のJ3は、大宮アルディージャが1位を独走。富山は2位の今治を追いかける展開が続いた。そして第31節には、ホームでの直接対決。これに勝利すれば、2位と3位が入れ替わる。しかし結果は、カタルシスなきスコアレスドロー。
「後ろの5枚をべったり引かせて、ボールを奪ったら(ワントップの)ヴィニシウス一択。岡田さんらしいなと思いましたね。完全に勝負に徹しているなと」
今治の監督は服部年宏だったが、その向こう側に岡田の強い意思があったことを左伴は感じていた。結局、富山に9ポイント差をつけた今治が、2位で自動昇格。3位に終わった富山は、この年に初めて開催されるJ2昇格プレーオフに回ることとなった。