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「井上尚弥と戦うチャンスを逃したくなかった…」26歳グッドマンは初めから“逃げる”気だった、は本当か? 異例の2回ドタキャン挑戦者の言い分
posted2025/01/20 11:04
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi/AFLO
「もうボクシングはやめる」
2度目のカットで世界スーパーバンタム級の4冠王者・井上尚弥(大橋)への挑戦が流れた直後、失意のサム・グッドマン(豪州)は絶望し、「このまま引退する」と言い張ったのだという。
1月上旬、IBF、WBO指名挑戦者グッドマンは同月24日に有明アリーナで予定された井上戦の準備段階で左目を大きくカット。もともと昨年12月24日に計画された一戦が1カ月延期になったのに続き、ここでまた負傷が再発した。今回の傷は前回の3倍の大きさがあり、もう試合挙行は現実的ではなかった。もちろん19戦全勝(8KO)の26歳がこのまま本当にリングを離れるとは思えないが、グッドマンが負ったショックは一時的に引退を口にするほどに大きかったということだろう。
2度目の故障…同情するのは難しい
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「左目に手術を受け、14針を縫った。そのうちの8針は傷の内側、6針は外側だ。サムは今では落ち着いてきているが、もちろん打ちひしがれている。ミリオンダラーを手にする機会を失ったんだ。井上との戦いは地位、名誉を得る機会であり、同時に他の選手との対戦ではあり得ない高給が手にできる場でもあった。準備段階で私たちはすでに5万ドルの経費を費やし、それを取り戻すことも叶わない」
グッドマンのマネージャー、ピート・ミトレブスキー氏の詳しい説明からは無念さばかりが滲み出ていた。
実際に準備期間の投資で大損となったグッドマンとその陣営側が「故障を偽って逃げた」などという見方は論外だが、短期間で2度目の故障発生がゆえに興行主の大橋ジム側に多大な迷惑をかけたことは紛れもない事実。これほどのビッグステージの主役になる選手たちには、少なくともその場に立つ責任が生じる。
大イベントを台無しにしたのだから、結果がすべての世界においてもう同情するのは難しい。