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「井上尚弥と戦うチャンスを逃したくなかった…」26歳グッドマンは初めから“逃げる”気だった、は本当か? 異例の2回ドタキャン挑戦者の言い分
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi/AFLO
posted2025/01/20 11:04
昨年10月、会見にオンラインで出席し、意気込みを語っていたサム・グッドマン
最初のカットが生じた時点で、昨年12月24日であれ、1月24日であれ、井上対グッドマン戦を強行したところでファンを喜ばせるような内容にはならなかったことは間違いあるまい。ヘッドギアを着用しての軽めのスパーでも傷が悪化するようであれば、もうまともに戦える状態ではなかった。1、2ラウンドで傷口は開き、TKOかノーコンテスト(無判定)で終わっていただろう。
「振り返ってみれば、故障発生から6週間後の延期を承諾すべきではなかった。4月開催にしてもらうように交渉すべきだった。井上と戦うチャンスを逃したくなかったから6週間の延期を飲んだのだが、実際には12週間が必要なケガだった。この1カ月の間に多大な迷惑をかけたことは申し訳なかったと思う。それでも最初のカットを隠し、お金のためにサムをリングに立たせ、開始直後に出血してファンを落胆させるような事態は私たちの望むところではなかった。それを避けたことに関しては私たちをリスペクトしてもらえればとは思う」
ミトレブスキー氏はそう述べていたが、グッドマン側が4月への延期を主張していたとしてもその希望が通ったとは考え難い。今後、アラン・ピカソ、ムロジョン・アフマダリエフ、そして中谷潤人といった“戦うべき相手”の名前も挙がっている“モンスター”は負傷再発のリスクがあるグッドマンをそこまでは待たなかったのではないか。
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だとすれば、井上対グッドマン戦は事実上、最初の故障発生時に終わっていたという考え方もできる。
グッドマンの闘争心に嘘はない
これまで何度か直接言葉を交わした一人として、個人的にはグッドマンの闘争心は本物だと今でも思っている。
世界王者レベルの実力者かどうかはともかく、26歳の無敗ボクサーが井上戦の挙行を心底から熱望していたこと、本気で勝てると信じてリングに上がるつもりだったことを疑ったことは一度もない。
ただ……断然のBサイドでありながら井上を振り回した形になったあとで、グッドマンと井上の人生が再び交錯することはもうあるまい。グッドマンが指名挑戦者の座を保ち、井上が4冠保持に固執すれば話は別だが、このカードにそこまでの希求力はないはずだ。